夜に包まれた世界を見て、彼女は「切ないね」と雫を落とすように小さな口から音を吐き出した。 いつもの冷たい瞳より、色のない表情より、よっぽど人間味に溢れた哀しげな顔。 「切ない? なにが?」 「ほら、またそうやってすぐに聞くんだから」 少しは自分で考えてよ。彼女は呆れたように僕を見る。哀しげな色はどこかに隠れてしまったらしく、彼女の表情はいつもどおりの無色になった。 息を吐き出して空を見上げる。星が疎らに輝いている黒い天。堂々とその空間に君臨するのは、白銀に輝く青白い月。綺麗で静か、そしてどこか神聖で荘厳にも思える。 彼女は、それを切ないと表現した。 「君は夜に似ているね」 なぜかそう思えた。白磁のように白い顔は夜にぽっかりと浮かんでいるのに、髪は暗闇に溶け込んでしまいそうな黒。 そんな彼女は、夜を構成するパーツに組み込まれてしまったように見えた。 「なら、私は夜が嫌い」 「切ないから?」 「切ないのは嫌いじゃない」 じゃあ、どうして。口から出そうになった言葉を慌てて飲み込む。 そのときに夜まで体内に取り込んでしまったのか、気分がずんと沈んだ。 彼女の言う通りだ。聞かずとも、わかるときにはわかってしまう。 「自分が、嫌い?」 ええ。何に満足したのか、彼女はそう言って微笑んだ。 どうして夜が切ないのか。それも、少し考えればわかるのかもしれない。少しは、彼女の思考に近づくことができるのかもしれない。 でも、どんなに考えて理解したところで、共感は出来ないのだろう。僕にはきっと、そう、一生。 だって、僕には君を嫌いになることなんて、到底できそうもないんだよ。 *** 久しぶりに更新したくせにめちゃくちゃ短いしよくわからないやつですみません。 いつ書いたのかなー、半年前くらいかな。ノートに手書きして放置してあったものを持ってきました。 でも、テンポは悪くない、はず。 ちょっとそれについてずぶずぶ泥沼です。テンポ良く書けないいい……。 リハビリと称して創作メモでチラチラがんばっていたのですが、難しいです。どうにかしなければ。 20141101 |