短編 | ナノ


 冷気が、肌を刺す。
 つん、と感じる痛みは、肌だけでなく心も刺激したようだ。
 少しずつ遠ざかって行く彼女の背をじっと見つめる。降り続ける雪に姿がぼやかされ、彼女は景色と一体化していった。
 さくさくと、林檎を口にするような音が小さくなってゆく。穢れが無く、白く綺麗なそれが彼女に染み付いた僕の汚い慕情を洗い流してくれれば良いのに。

 陽は、まだ差さない。藍錆色の空から降り続ける白は、彼女の足跡を埋めるように地へと積もり続ける。

 この黒い想いも、白く綺麗な物へ変わってくれはしないだろうか。


 見えはしない彼女の小さな背を雪景色に映し出し、僕は独りで天を仰いだ。





君かへす 朝の敷石 さくさくと
雪よ林檎の 香のごとくふれ
北村白秋













***

新年一発目くらいは!ちゃんとしたものをと!思ったのに!!
作品が仕上がる気がしないので、もうストックから。


友人と昨年度の文化祭でコラボしたもの。
二次創作です。展示作品です。
私は男性目線、友人は女性目線。
授業で扱った短歌なのですが、切ない感じに心を奪われました。



20140209



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