広がる青に、爽やかな陽射し。開放感溢れる大地に、気分は高揚した。この世は美しい。偉大なる自然と生きてゆけるほどに。 紫草の白い花弁が散りばめられた野原。小さく可愛らしい花に囲まれ、過去の恋人は物静かに佇んでいた。 何も、あの頃と変わらない。私が愛する、あの人のまま。 鳥が甲高い声を上げる。付きの者も、番人もそちらへと視線を遣った。あの人の顔はこちらへ向けられたままだ。遠目なために視線を追うことは出来ないが、此方へと向けている気がする。そう願っているだけ、なのだろうか。 私のことを見ていることを願って、手をあげた。そのまま、ゆらりゆらりと左右に動かす。 見ているかい、いつかの愛しい人よ。私は、まだ、貴方に心を奪われたままなのですよ。喩え、貴方が私以外と契りを交わしていても、確かにあった幸せな日々は消えることがない。貴方のことを恨もうなどとは微塵も思っていない。 だって、私のことを愛していたのでしょう。あの日々に、嘘などないでしょう。 誰かに見られても構わない。咎めたいなら咎めればいい。 それでも、私は貴方を愛している。 紫の にほへる妹を 憎くあらば 人妻故に 吾恋ひめやも 大海人皇子 *** これも友人とコラボしたものです。三年次、文化祭での展示物。 友人は額田の王視点でした。 まあ、学説などでは本当の恋愛感情があっだけではないと言われていますけどね。そこはロマンを優先して。 |