短編 | ナノ


 君に手紙を書くなんて、いつぶりのことだろう。何年か前の年賀状以来かな。それ以外に思い当たるものは、一つもないかも。
 もう、何年も一緒にいるのにね。改まってこんなことをするのは、なんだか少し、気恥ずかしいです。
 君は滅多なことがないと、私に反発しないね。どうしてですか。私だって、君のわがままを聞きたいと思ってるのになぁ。
 君はいつも優しく笑ってくれます。私は、その笑顔にいつも救われています。君が笑うたびに、安心して、胸がきゅんとして、切なくなって。それがいつまでも続いてほしいなと、そう願っています。
 君に怒られると苛立つし、むかつく。
 君が悲しい顔をしてると、私まで悲しくなる。
 君が嬉しそうだと、楽しそうだと、幸せそうだと。
 その一つ一つをこうしてあげることができるのも、君がそれだけの顔を私に見せてくれたから。
 それだけ、私に心を預けてくれたから、ですよね?
 これからも、たくさんの顔を私に見せてください。たくさんの言葉を私に聞かせてください。
 私は、忘れないようにしっかりと、全部、覚えておきますから。
 その言葉を、声を思い返すたび、君にその意味を問うて、君を困らせますから。
 それを何度も何度もできるくらい、ずっと君のそばにいます。
 いつか、君と顔を合わせられなくなってしまっても。声を聞けなくなってしまっても。
 それを思い出して束の間の幸せに浸れるように、しっかりと。
 じゃあ、ここらへんで終わりにします。今日の夕飯は、君の好きなビーフシチューです。
 あと、食べてしまったチョコ、買っておきました。ごめんなさい。








***


今年の学校行事で、友人とコラボしたもの。
「愛してる」や「好き」という言葉を使わずに、手紙を書いてみよう!と。芥川龍之介さんのに触発されまして……。

自分の語彙力、表現力のなさが改めて突きつけられた良い機会でした。
不完全燃焼でしたが、友人とコラボできてとても嬉しかったです( ´ ▽ ` )



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