短編 | ナノ


とろりと、甘さが口内に広がった。温かなそれに、心が休まるようで。
「あ、ずるい、俺にも。」
「はいはい。」
椅子に座って、食パンをかじり出した彼。私のマグカップに注がれた視線に少し笑ってから、「ちょっと待って。」とポットを片手に言った。
「あー……、幸せ。」
微笑んだ彼の隣に腰を下ろして、寄りかかる。彼は、私の入れたコーンスープに口を付けていた。
そっと繋がれる、私の右手と彼の左手。暖かな陽射しに包まれながら微笑み合った私たちは、額を合わせて目を閉じる。
 
たとえ世界が終わろうとも、想いだけはお互いの傍にあるように。



20120922

文化祭無料配布第三弾。
これが最後です。


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