短編 | ナノ


「俺、お前の目嫌い。」

唐突に言い出した彼は、私に向けていた吊り目を窓へと向けた。

ぽかん、と、呆気に取られていた私。数秒後、私の開きっぱなしだった口からは、「……は?」という間抜けな音。

「嫌い。」

眉を寄せながら、ゆっくりと。噛みしめるように、再び彼は口にする。

耳を塞ぎたくなった。もう聞きたくないと、そう拒否してしまいたくなって。

「もう、良い、言わないで、わかったから。」

顔を背けた。泣き出しそうになったから。彼が嫌いと言った私の瞳が、涙で潤ってゆく。

嫌われしまったこの目を、剥ぎ取ってしまいたい。彼に嫌われる要素なんて、私にあってはならないのに。

「俺以外を見る目なんか、嫌い。」

ぎゅう、と、強く抱きしめられた私の視界には、彼の胸元しか映らなかった。


20120921









文化祭無料配布第一弾。


×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -