memo ねたつめあせ。 ‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐ あげない。 私の、私のよ。 誰にもあげないの。 だーれにも。 「近寄っちゃだめ、」 ああもう、バイトなんてしなくていいのに。どうして私の知らない世界を作ろうとするの。私が把握できない場所を欲するの。 「この人は、私のよ」 彼の腕に軽く触れた彼女は驚いたように、そうして何処か怯えたように走り去っていく。 残された私と彼。彼は呆れたように、溜息を一つ。 「またか、」 「だって、あなたが悪いの」 あなたが、私から離れようとするから。 「ずっと一緒にいると飽きるだろう」 恐ろしいことを口にした彼は、綺麗な瞳でもうすっかり暗くなった空を仰いだ。 鳥籠に囚われたままの鳥は、空に焦がれて籠にぶつかり続けるのだろうか。使い物にならない羽根を、これでもかと懸命に狭い狭い籠の中で羽ばたかせるのだろうか。 少し癖っ毛な茶色の髪。ごつごつと骨ばった長い指。羨ましいくらいに綺麗な肌。すっと通った鼻筋。 すべてを見通すような、奥二重の吊り目。 「飽きたりなんてしない」 「俺は飽きるよ、そして離れる。それは嫌だろう」 なら、少しの自由をくれ。 瞳は私へと。この綺麗な瞳が濁るのは、いつ? すべてを諦めて、私だけを見てくれるようになるのは。 「離れたらその羽根をもいでやるだけよ」 最後の僅かな希望すら奪い取って、そして。 「ずっとずっと、籠の中で大事に飼ってあげる」 飛ぶことを、空を失った鳥を求めるのは、私だけ。 あなたを求めるのは、私だけ。 未だ光を失わない瞳を見つめながら、この瞳に映る私以外すべての人間が彼を嫌ってしまえと切に願った。 |