12





「どうでしたか?」
「どうもこうも…っ」
先程までの熱はどこへやら、すっかり冷たくなってしまったシーツの上で僕は憤る。
「気持ちよかったでしょう?」
「そんなことはっ…!」
男である僕が、また男である凪さんにお、犯されて気持いいはずがないのに…それを否定できない自分がいて。

「随分と他人に対して普通の応対ができるようになりましたね」
「あっ……」
言われてみれば、たった数時間前まで他人であった凪さん相手にここまで地を出すのは珍しい。というか、僕としてはあり得ないことだ。
「何かを得るためには何かを失わねばならないこともあります。洋壱さんの場合は、それが今であったということに過ぎません」
それだけ言うと、凪さんは腰かけていたベッドから立ち上がる。
「あ、今温かい紅茶を淹れてきますから待っていてください」

凪さんが帰ってくるまでのしばらくの間、僕は放心状態で考え込んでいた。
これで人見知りが治ったのかとか、本当にこの方法が一番良かったのか、他に方法はなかったのかとか。ただ、いくら考えたとしても過ぎてしまった時間は戻りようがないので、考えるだけ無駄だというのはわかっていた。がしかし、それでも考えずにはいられなかったのだ。
道を踏み外してしまったような、そんな気がしてしょうがなかったから。

「どうぞ、さっきと同じアールグレイです。お好きでしょう?」
なぜ僕がアールグレイの紅茶が好きだとわかったのだろう? 一言もそんなことは言ってないのに。
少しは疑問に思ったが、すでにいくつものことを言い当てられているのであまり深くは考えなかった。

温かいアールグレイの紅茶が、僕の体に流れ込んでいくのがわかった。







11.08.28.Sun


戻ル
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -