05





「さあ、この扉の奥へどうぞ」
凪さんに促され、一歩ずつ、進んでいく。その度に、扉と僕の距離がなくなっていく。
変わる、そう僕は変わる。
扉に、手をかける。ぎぎぃ…という音を立てて、扉は開いた。
「変わりましょう、洋壱さん。新しいあなたへ」

どくんどくん。心臓の音がうるさい。少しは静まれ。
無音。扉の奥はそんな空間だった。なんの音もしない。するとしたら、ヒトの立てる音だけ。その空間から出る音はなにもない。
「洋壱さん、その奥で服を脱いできてください。全部ですよ?」
そう言って指されたのは、衝立のようなものが仕切っている空間だった。
「わかりました」
しっかりとした足取りで、そこへと向かう。

衝立の蔭に隠れると、さっさと服を脱ぐ。何も纏わない、生まれたままの自分の姿を見て、相変わらず肉付きの薄い体だと思った。
もう少し男らしい体つきになればよかったのに、どうやら筋肉が付きにくい体質らしく学生時代からスポーツは程々にやっているのに薄っぺらいままだ。
ぺたぺたと、手で己の胸板を触ってみる。…胸のない女性みたいだ。

はあー…とひとつため息をつくと、僕は衝立の陰から出た。
「お待たせしました。ところで、どうして服を脱がないといけないんですか?」
「すぐにわかりますよ」
にこり。凪さんが嗤う。

「こっちです」
「はあ」
凪さんに言われるまま、手をひかれて廊下を歩く。
「この扉の奥です。どうぞ」
ぎぎぃ…始めに通った扉と同じような音を立てて、その扉が凪さんの手によって開かれた。

その先に何があるのか。怖いような恐ろしいような……楽しみなような。
ごくりと唾を飲み込んで、僕は一歩を踏み出した。







11.06.20.Mon


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