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完全なる人選ミスですな (カントー組+ゴールド)

「どういうこと?」
「うっわ!?なんつー羨ましい状況!!」

オーキド研究所の敷地内にある、ポケモンの生態を研究する為の広大過ぎる土地。そのいっかくで目に入ってきた光景にファイアがげんなりとした様子で言葉を漏らせば、逆に大声で騒ぎ立てるのはゴールドだ。

正反対な二人の視線の先には木に寄り掛かって座るレッドの姿。その両隣りにはレッドにもたれ掛かるように座るリーフとななし。寝ているらしく、その瞳は閉じられている。

つまりは二人に挟まれて座っているレッドの姿を見て、ゴールドが羨ましいと連呼しているのだが、イライラの限界を超えたファイアが鬱陶しいと態度を隠す事もせず眉を歪めた。

「うるさいな、傍で大声出さないでよ」
「ファイアお前っ、あれを見てなんとも思わねーとか、男としておかしい!両サイドに可愛い女子!!ロマンだろ!?」
「あんたの頭のがおかしいよ」

「レッドさん!オレがそこ全力で変わります!!」

ロマン云々はファイアには理解し難くむしろしたくもない訳だが、これでもかと嫌味ったらしく言ってやったのにゴールドは下心丸見えの台詞を言い放ちながらレッドの元まで駆けて行く。
突然現れたゴールドに、レッドは驚きはしないものの「…ゴールド?」と不思議そうな顔をした。
勿論ゴールドの言葉は見事に流されたが。


「ねぇ、レッド。いくら日が出てるからって、流石に風邪引くよ」

「俺は、大丈夫」

(言うと思った…)
(言うと思った!)

風もなく日が当たっているとはいえ、まだ少し肌寒いこの季節。半袖で平然としているレッドにはもはや何も言う気が起きないが、ななしとリーフはレッドのような超人ではない。リーフに至っては身体が弱いのだから尚更だ。

ファイアが「違うよ。両隣りの二人が…」と呆れ気味に補足を入れれば「起こしたけど」と困ったように首を傾げた。レッドもその辺りは理解していたようで、一応起こす努力はしたらしい。

これだけ両方から寄り掛かられては、一人では身動きが取れず困っていたようだった。

取り合えずこのままにはしておけず、起こそうかどうか悩んでいると意気揚揚とゴールドが名乗りをあげた。


「だったらオレが研究所まで連れて行くんで!!」



「・・・ゴールドはダメ」

「オレ全否定っすか!?」
「まあ、当然だよね」

「マサラの人等は本当、オレに優しくねえよな…」


レッドから出た言葉は、なんとも分かりやすい一言。どちらにしろゴールドに運ばせることには同意しかねていたので、ファイアも頷く。
わざとらしく落ち込むゴールドを放って二人を起こそうとレッドが手を伸ばせば、起きたばかりのような間延びした声が横から聞こえた。

「んー…?」
「リーフ、起きた」

まだ眠そうな目を擦りながら、リーフがゆっくりと身体を起こす。
レッドが覗き込むようにおはようと言えば、にこりとした表情と一緒におはようと返ってくる。目の前に立っていたファイアとゴールドに気が付くと、リーフも不思議そうに尋ねた。

「ファイア?とー…、誰だっけ?」
「ゴールド。よろしくなー。ってこのやり取りもう何回目だ」

「あれ!?ななしは!?」
「ああーやっぱ聞いてくれてねえー」

何度目か分からない会話にゴールドも棒読み具合である。覚えている、いないについてはリーフ本人にしか分からないが、最終的には聞いてすらいないという仕打ちに、頭を抱えてしゃがみ込んだ。
きょろきょろとななしを捜すリーフに、レッドがもう片側を指差した。

「…こっち」
「あ、ななしも寝ちゃったんだ。もう!なんでレッドは間にいるの!」
「また目茶苦茶な事言ってるよ」

ななしの姿を見つけ安堵した表情のリーフがその寝顔を少し見詰めた後、何故自分とななしの間にレッドがいるのかと文句を言うのでファイアは始まった…と呆れるしかない。レッドを押し退けるようにぐいぐいとその肩を押すも、リーフの細腕ではびくともしない。そんなリーフを気にもせず、今思い出したかのようにレッドが顔を上げた。


「そういえば二人は、用事?」

「レッドさん遅っ!」
「グリーンに連れ戻すよう頼まれたんだよ」

「グリーンが自分で来ればいいのに。とりあたまー!!」
「リーフ、それだと意味合いがちょっと違う」

正確にはレッドを捜しに出たななしとリーフが戻って来ないので、ファイアとゴールドが迎えに来たのだが、レッドの言葉を聞いたファイアはその説明をするのすら嫌になった。

リーフは本来自分が連れ戻しに来た側だということを忘れているのだろうか。
そして、とりあたまが妙にツボったのか大笑いをするゴールド。

あんまりにもグリーンが不憫に感じられたファイアが本人はいないがフォローをした。


「…ななし、全然起きない」

「やっぱオレがおぶって…」
「そんなのダメ!!!私が連れてくの!!」
「いや、リーフじゃ無理だろ」
「ポケモンがいるもん!!」

これだけ周りで喧しくしているのに、ななしの規則正しい呼吸は変わらない。
話を戻したゴールドが運ぶと豪語すれば、すかさずリーフが止めに入る。ポケモンがいると言い放てばその言葉にレッドが反応した。帽子を被り直したのを合図に、全員の声が綺麗に重なった。



「バトルで、決める」
「バトルで決めようぜ!」
「バトルで決めようよ」



「・・・・・はあ」


もはやこの騒ぎの間に自分が運んだ方が良いんじゃないかと、ファイアが大きな溜息をついた同じ頃、





「あいつら遅過ぎる!!!!」




研究所に一人残ったグリーンの叫び声が響いた。



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