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もしものシュガーのお味

外は一面の雪景色。朝からしんしんと降り続いている雪はふぶいてはいないものの肌に受ける空気は痛い程で、こんな日はあったかい家の中でじっとしているに限る。

「コウキくんて可愛い見た目に寄らず大人だよね」
「それは、褒めて貰えてるの?」

ブランケットに丸まってソファーに縮こまるわたしとは対照的に、本を片手にきちんと椅子に座っているコウキくん。

「纏う雰囲気?」
「そんなつもりないけどなあ、むしろ逆だと思うくらいだよ」
「コーヒーが飲める!」
「それはななしの基準でしょう?ココア、可愛くて良いと思うよ」

わたしの目の前に置かれたカップの中身をちらりと見てから、若干笑みを含んで言う。そんな表情にもどこか余裕を感じて、子供扱いされたわたしはちっとも面白くない。

少しふて腐れて、ブランケットに包まったままコウキくんの元へ歩み寄った。

「しかも無糖。砂糖とか入れないの?」
「うーん、甘いの好きじゃないから」

「…それはなに読んでるの?」
「ポケモン医療学の本」
「・・・・・」

目に入った内容は小さくて細かい文字がページにギッシリと敷き詰められていて、わたしには全く理解出来ないであろう事は一目見ただけで分かった。

キミばかり、
大人になっていってしまう。


「わたし…コウキくんとは全然釣り合わないよ…」

「どうしてそう思うの?」
「だってわたし、本当に子供っぽい…」


沢山の時間を費やさないと、君の隣に並べない。
今のわたしじゃどう頑張ったってその本は読めないし、コーヒーだって飲めないから。


「同じものを共有したいって気持ちはあると思う。でもさ、本もコーヒーも僕にとったらその相手はななしじゃなくて良いんだ」

「わたし…じゃ、なくても?」

鼻がツンとしたから、堪らず顔を下げた。コウキくんは優しそうな見た目に寄らず、お世辞だって言わない。だからきっと、本当にそう思ってるの。

なーんだ。
他の人だって良いんじゃない。

「コウキくんの人で無し…」
「最後まで聞いてよ」

頭をそっと撫でられる。
もう本当にいっつも、わたしばっかり振り回されてる。

「無理に僕に合わせないで、ななしらしくしてくれるのが一番。こうやって、一緒の時間を過ごせてるだけで僕は満足だから」


だってさ。


あんまり幸せそうに君が笑うから、

そんな風に目の前で微笑まれては、返す言葉がなんにもない。


「どうしてそんな…余裕たっぷりなのよう…」
「これでもかなり限界なんだけど」

「…嘘っぽい」

「嘘だと思う?」


少し悪戯っ子みたいに笑ったきみは、

わたしよりずっと子供っぽい。



頬に熱が届いたのは、ほんの数秒後。


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