― 07 ―

すっかりニドランとも打ち解け抱っこしたり撫でたりじゃれ合っていれば、博士は顎に手をやり何やら考えていた。


「そうと決まればななしくんを部屋に案内せんといかんのう」

そうだ、ここに住み込みでお手伝いって話ならばそうなるよね。
だったらおれが!と真っ先に名乗りをあげたグリーンくんだったけど、

「おまえさんはまずあの散らかした本を片してからじゃ!」
「そんなん後で良いじゃんかよー…」

ピシャリと博士に言われてしまい、渋々片付けに部屋に戻って行った。
文句を言いつつもやるのが偉いなぁ。
わたしなら100%の確率で、今やろうと思ったの!とお約束のセリフを言ってたに違いない。
…二人くらいの歳だったらって話。


「助手用の部屋じゃが今は誰も使っておらん。好きに使ってくれて構わんよ」

博士達をお手伝いするわけだから助手ってのも間違いじゃないんだろうけど、なんだか気が引ける。

「レッド、悪いが部屋まで案内を頼めんか」

レッドくんはこくんと頷く。
博士は研究がまだあるみたいで、部屋までの案内はレッドくんに任せてグリーンくんに続いて部屋へ戻って行った。
施設内の詳しい説明は後で博士がしてくれるそうだ。


「俺達も行こう」
「うん」

ニドランにまたね、と言ってわたし達も部屋へ戻る。

客間を出るときに、片付けをしてるグリーンくんを横目でちらりと見れば、ティーセットなども綺麗にまとめて下げている最中で、しっかりしてるなぁ、なんて感心してしまった。
どうやら部屋は二階にあるみたいで、レッドくんの後に続いて階段を上り廊下を少し歩けば、一番奥の角部屋にたどり着いた。


「多分、ここ」
「え、多分て」

そして躊躇なく部屋のドアを開け放った。こらこらこら、一応ノックくらいしなさい。

言われた通りそこは空き部屋のようで、夕暮れで橙に染まった部屋にはベッド、机、クローゼットなど生活に必要な最低限の家具が置いてあるだけ。
換気だろうか、窓は開けられたままでカーテンが風で少し揺れている。無用心とも取れるけど…。

わたしは窓際に近づくと、そこから町を眺めた。高台に位置する研究所からは町がよく見渡せる。


「レッドくんが此処に連れてきてくれなきゃ今頃路頭に迷ってたよ。まだ不思議な感じだけどしばらくはここで頑張るからさ、改めて宜しくね!」

振り向いて言えば小さく頷いてくれた。

「ななしが、」

わたし?わたしがなんだろう。
レッドくんからの次の言葉を静かに待った。



「良かった」

・・・・・はい?
わたしが、良かった??
あ、ケガが酷くなくて?いやいや、その会話はさっきした気がする。
相変わらずの謎掛けレッドくんの問題を推理していると、



「ポケモンを、怖がらなくて」


まさかの、レッドくんから導き出された解答。
真っ直ぐにこちらに向けられた瞳は夕日の色に包まれていて、赤が余計綺麗に見える。
捕われたみたいに目が反らせない。多分今日一番の彼の笑顔という表情に出会った気がする。

キミの謎解きの先にあるのは、やはり優しい答えばかりだ。



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