来たる土曜日、サッカー部は珍しく練習を休みにしていた。と言うのも、冬季休暇中も練習練習練習と毎日のようにサッカーに明け暮れていたからである。部員達は久しぶりの休みをどう過ごそうかと思いを馳せながら眠りについただろう。そして、練習でもないのに浮ついてやたら目が覚めてしまったりして。意外にも、三国もその内の一人であった。


「…ん?着信?誰から、っ!」


まだ眠気を引きずる瞼を擦っていれば、バイブレーションで着信を知らせる携帯を開く。そして三国の眠気はその瞬間に吹っ飛んでいた。慌てて通話ボタンを押し、もしもしと声を出す。携帯を握った手が僅かながらに汗ばんだ。


『あ、…三国?久しぶり』


久しく聞いていなかった声に、三国は胸が高鳴った。その、少し安心したような声に表情を緩めながら久しぶりだなと返す。元気だったかと問えば、それなりにと彼らしい捻くれた返答。ああ、変わっていないのだなと安堵してしまう。


『あのさ…今日、暇?』

「ああ、今日は久しぶりに休みになったんだ。南沢は、」


問い返そうとした瞬間、ピンポーンとインターホン。三国はこんな時にと思いながら、掛け直すと告げて泣く泣く電話を切った。起きてから暫く経っていたが、ずっと電話をしていたせいで着替えてもいなかった。何かのセールスなら無視してしまおうと直接玄関まで行き、ドアの小窓を覗き込む。三国は目を見開いた。


「うわっ、急に開けんなよ…ばか」

「あ、すまん…つい」


勢い任せに開けたドアに驚いて飛び退く彼、南沢は唇を尖らせた。三国は目の前に南沢が居る事にまだ実感が湧かないような表情をしながら、寒そうに震えている南沢の手を引いて家へ招き入れた。南沢は、引っ張るなと言ってすぐに三国の手を振り払ったが慣れた様子で靴を脱いで三国の部屋に向かっていた。


「!み、南沢っ、さっき起きたばかりでその」

「別にそんな散らかってないだろ?」


そう言って勝手に三国の部屋に入っていく南沢に、三国はやれやれと肩を竦めて顔を洗ってくると告げて洗面所に向かった。南沢は、はいはーいと生返事をして正に起き抜けと言わんばかりのベッドに近寄る。そっとシーツを撫でれば、そこにはまだ三国の温もりがあった。思わず、南沢はベッドに寝転んだ。枕に頬を擦り寄せれば、三国のシャンプーの匂いがして頬を緩める。


「…南沢?」

「!…何?」


顔を洗って戻って来た三国は、そんな南沢の様子を見てきょとんとしていた。南沢ははっとしたように体を起こして、しれっと前髪を指先で払った。それを見てはは、と笑った三国に南沢は頬が熱くなるのを感じた。ベッドに腰掛ける三国と目も合わせられない。


「ほら、南沢」

「っ、…」


三国に呼び掛けられて、ちらりと三国を見れば腕を広げて微笑む姿に南沢は息を詰まらせた。おいで、と言葉にせずとも伝わるその仕草や表情に南沢は更に顔が熱くなる。思わず俯けば、ふわりと温かい体に抱き締められる。よく知った三国の体温に、南沢はほぅと安堵の息を洩らして静かに背中へ手を伸ばした。そして、肩に顎を乗せて甘えたように三国を呼べば優しく頭を撫でられる。


「三国、すき、だいすき」

「ああ、オレも好きだよ」

「…好き、だけ?」


三国の言葉に不満そうに眉を寄せて体を離した南沢に、三国は空かさず唇を寄せた。そのまま、呼吸をさせない程に何度も何度も南沢の唇を啄み細い肩を押して、終いにはベッドに押し倒した。息を乱れさせて目を潤ませている南沢に、三国は愛しげに目を細めた。そして、鼻先を擦り合わせるようにして南沢の視界をジャックする。


「愛してるに、決まってるだろう?」






日溜まりによく似た愛しかた



title by hmr

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細かい事は置いておいて、とにかく三南の日おめでとうございます!






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