南沢が体を売っているという話を聞いたのは、二年になって半ば位だった。最初はただの噂だとしか思わなかった。オレは南沢とはガキの頃からの付き合いだ。だから、南沢がそんな事をするようなヤツだとは思えなかった。しかし、ある日の部活で南沢の首筋に赤く残る痕があるのに気付いてしまった。まさか、と思った。だが、後日スーツ姿の男の腕に手を絡めて花のような笑顔を浮かべている南沢を見てしまい、それは確信に変わる。その内、南沢は毎週金曜部活後着替えもせずにすぐさま帰宅するようになった。身売りをしているのだとすぐに分かった。


「南沢さぁん、また帰っちゃうんスかァ?遇には遊び行きましょーよー」

「悪いな。金曜はダメなんだ」


南沢に懐いている後輩の倉間が帰ろうとする南沢を引き留めようとしている事が幾度となくあったが、南沢は薄く笑みを浮かべて倉間の頭をくしゃりと撫でてはぐらかすばかり。倉間のやり方ではダメだ、南沢はのらりくらりと躱してしまう。鞄を肩に掛けて足早に校門へ向かう南沢を追い掛けて、ポケットにしまわれた細い手首を掴んだ。南沢は驚いたように肩を揺らして振り返る。しかし、オレを見ると見開いた目を細めて首を緩く傾けた。


「…何?」


わざとらしく浮かべられる笑みに妖艶ささえ感じさせる。思わず息を呑みながら、南沢の手首を引いて自宅の方へ歩き出す。文句の一つでも言われるかと思っていたが、南沢は何も言わず黙ってオレについて来た。逆に、握った手首から伝わる温もりにオレが緊張してしまう位だった。


「で、自宅に連れ込んで何するつもり?」

「!ばっ、ちっ違う!…お前、身売りをしているだろう」


さらりと前髪を掻き上げながら、目を細める南沢に思わず狼狽えてしまう。一度吐息を洩らしてから、オレのベッドに我が物顔で座っている南沢に恐る恐るそう告げる。それを聞くと、南沢はその話かとばかりに足を組んで顔を逸らした。やはり事実で間違いないらしい。


「だから何?やめろって言う訳?」

「と、当然だ!お前は雷門の大事なエースストライカーで、オレの、…大事な友達で…こんな汚れた人間じゃなかった筈だ」


顔を逸らしたままの南沢に、気付けばオレは足の上に置いた拳を強く握っていた。黙っていた南沢が吐息を洩らして、徐にこちらを向く。その表情はどこか悲痛さを孕んだ悲しげなもので、オレは南沢を責め立てている事が悪い事のように思えた。






mae|tugi

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