※拓人の姉捏造

南沢さんは性格が悪い。それはオレがサッカー部に入部した一年前から変わらない周知の事実だ。ただ、性格が悪い割に彼は人に媚びを売らない。先輩にも教師にも同級生や後輩と同じスタンスを貫く。 だからなのか、厭味っぽい所があったり厳しい部分もあるのに不思議と嫌いにはなれなかった。二年にして″ファーストチーム″のエースナンバーを背負う事になった事でどんなに陰口を叩かれても屈しない南沢さんは寧ろ、尊敬に値すると思った。その頃から南沢さんへ特別な感情を抱いていたのだろう。そして、この感情はある日を境に恋愛感情だと確信した。


「あ、南沢さん!おはようございます」

「…神童か」


珍しく朝練のない日、前を歩いている南沢さんに気付いて駆け寄って挨拶をしてぎょっとした。南沢さんの唇の端に青痣が出来ていたからだ。それを隠すように絆創膏は貼られていたが、明らかにそれは殴られたものだとわかった。南沢さんは喧嘩なんてするような人じゃないし、だとすれば一方的に殴られたものではないだろうか。


「ど、どうしたんですか…それ…」

「あーこれ?格好良いだろ、いつにも増して男前で」


はぐらかすように作り笑いを浮かべる南沢さんは、明らかに何かを隠しているようだった。ただ、あまり詮索してはいけない事かもしれないとその時のオレは何も言えなかったのだ。南沢さんは、その日の部活を休んだ。三国さんに聞けば、気分が悪いので早退したのだと言う。朝の綺麗すぎる作り笑いが脳裏に浮かんだ。


(南沢さん…)


その夜、オレはどうしても南沢さんの事が気になって南沢さんの携帯に電話を掛けた。コール音ばかりが何度も響く。留守電にも繋がらない。話し中なのだろうか。諦めて電話を切ろうとしたその時だ。


『…もしもし』

「!み、南沢さんですか?こんばんは、神童です…あの、実は今朝の事で」

『今からお前ン家行っても良いか…?』


携帯から聞こえる南沢さんの声は少し震えていて、酷く弱々しいものだった。オレの両親は仕事で家を空けていたので、構わないと告げて電話を切った。南沢さんを家に招くのは初めてだったし、何よりただ事ではない気がしたから途中の所まで迎えに行く旨も伝えて。自宅近くにあるコンビニに出てくると、そこには既に南沢さんの姿があった。


「南沢さん」

「…っ、」





mae|tugi

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