フィフスセクターからの刺客との試合終了後、グラウンドで試合の結果に打ち拉がれる雷門サッカー部一同。一方的な試合、傷付けられた仲間、化身。理不尽で、分からない事ばかりだ。しかし、何よりもオレが反省しなければならない事は、雷門サッカー部″ファーストチーム″のゴールキーパーとして、役目を果たせなかったという事だろう。


「あれ、南沢さんは?」

「そういえば…」

「南沢くんなら、トイレに行くってさっき出て行ったわよ」


そんな事をぼんやり考えていると倉間と速水、そして音無先生の会話が耳に入ってきた。彼らの会話通り、確かにこの場に南沢の姿はなかった。オレはそれを確認すべく音無先生に歩み寄り声を掛けた。


「では、まだ戻って来ていないんですか?」

「ええ、そうね。でもそろそろ戻…って、ちょっと三国くん?」

「自分が連れて来ます!」


オレは南沢の行方を知りすぐさま踵を返したが、音無先生に一礼するのを忘れていた事を思い出し頭を下げて駆け出す。南沢の事だ、放っておいたら勝手に帰るかもしれない。まだ監督からの指示を受けたりミーティングをする可能性もある今、部の中心である三年、しかもファーストチームのエースナンバーを背負う南沢が居ないとなっては後輩に顔向け出来まい。そういえば、どこのトイレに行ったのか聞くのを忘れてしまったが…恐らく近場のサッカー棟だろうと見当を付けてトイレの扉に手を掛ける。


「くそ、…何で、何でアイツが…っ」


どうやら場所は間違っていなかったようだ。確かにこの扉の中から南沢の声が聞こえる。しかし…それは、いつも気丈で自信に満ちた彼の声とは違っていた。鼻を啜る音と、水の流れる音が聞こえる。オレは戸惑いながらも静かに扉を開けた。


「南さ…っ、」

「!さ、…さん、ごく…」


扉を開けてオレは息を呑んだ。何故なら、そこには涙で目を腫らした南沢が居たからだ。南沢は、オレが入ってくると驚いたように目を見張り水が出っ放しの水道を背に、気まずそうに顔を背けた。赤くなった目元、そして長い前髪から滴る雫。泣いて、顔を洗っていたのだろうか。


「…何しに来たんだよ」

「あ…その、お前がいつまでも戻って来ないから呼びに…」






mae|tugi

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