Desideri su una stella.
世は夏真っ盛り。
学生は夏休みなんて
Lunga vacanza 真っ只中で。
「むー……んー」
今日は珍しく仕事も遊びもなく、冷房の効いた自室でゴロゴロとしていた。
何もする事がない。つまりはーーー暇なのである。
今頃ツナも補習だろうしな…。暗い顔でテストの点が悪かった、と夏休み前に呟いていた。その後、家庭教師に愛の鞭と言う名の指導をされていたが。
彼の人も現在は学校に向かっている。生徒のためか、エスプレッソのついでか。
―――明らかに後者だろう、出て行く際の口元が少し楽しそうであった。
「あー、俺も出るか…」
こう、ダラダラとしていたら……余計な事まで考えてしまいそうで。
喧騒の中、蠢く影と硝煙の匂い。場違いな程の、溢れんばかりの白シロしろ。
歪められた紫苑の先に、溢れた命の色。が目に焼き付いて。届かない叫びは誰のものなのか…本当は解っている。
数日前から繰り返し廻る夢。最後は血溜まりに溺れるクルミ色で、手のひらから虚無感を残して擦り抜けていく。嫌になる程鮮やかな白と紫苑が消えてくれない。
「―――っは、」
頭を振って、残像を追い遣る。
今は何をどうしようとも言えない、考えない。先は決まっていないハズだから。爪を研いで、牙を隠して。『その時』を待てば良い。
「はぁー……ちょっと気分転換っ」
勢いに合わせて立ち上がる。
駅前の本屋に、何か新しい発見があるかもしれない。好みのジャンルの新刊や、隣接しているカフェの季節限定コーヒー。
目先の楽しみを思い浮かべつつ、部屋を後にした。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
はーっ、満足!
家に向かう足取りは、行きと違ってとても軽い。脇に抱えた書店独特の紙袋には数冊、俺好みの本が入っていて。カフェの季節限定コーヒーもなかなかの味だった。飲みながらもう一度飲もうと決意したくらいである。
散々吟味した結果、帰宅が夜になってしまったが心はだいぶ晴れていた。いつもの『らしさ』を取り戻した、―――これで彼の黒い死神の前に出ても平常心で居られる、かな?
「…お?」
家に近付くにつれて賑やかな声が聞こえてくる。…ちょっと、綱吉くんや?近所迷惑じゃないかな??結構な声が響いているよ。
「………、ただいまー」
何だか取っ手の無い扉を押して(もちろん、何だか色んなものが蠢いている部分は避けて)騒がしい我が家へと声を掛ける。が、誰も気付いてもらえない……ツライ。
仕方がないので階段を上がって、一層華やかな部屋の開け放たれた扉をノックしながら顔を覗かせた。
「ツーナ、」
「!兄ちゃん、お帰り」
「ツナ、兄ちゃんが居たのか!?」
「はひー!??お兄さんですか?」
一気に注目されてしまった。それぞれの顔を見回して、首を傾げる。
「ツナ、友達?」
「う、うん。いつも話してたでしょ?山本に、そこのベッドで寝てるのが獄寺くん。あと、ハルと…ビアンキ」
彼らを紹介するツナは照れくさそうで、でも嬉しそうだった。…可愛いなあ。
「そう、良かったね。…みんな、綱吉とこれからも仲良くーーー助け合ってね」
「あ、もちろんっス!」
「はいデスー!!お兄さんも仲良くしましょう!」
「…俺?」
まさか返しが来るとは思わず、瞬きを一つ。
「そうっスよ、ツナの兄ちゃんなら仲良くなれそうだしな!」
「…未来のお兄様……よろしくお願いします!!」
「ちょ、ハル!?変なこと言わないでー!!!」
一方的に知ってはいた。どんな経歴で、『知識』としての性格や内面も知っていた”つもり”だった。ドタバタと賑やかで、それでもツナへの信頼が溢れていて。
自然と頬が緩む。
「俺は沢田ナマエ。よろしく、ね?」
満面の笑みで応えてくれた彼らが、願わくはーーーずっと変わらず、笑っていられますように。
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