お返しは何?

ずっともどかしい想いを抱えていた。
世間でよく言われる”友人以上恋人未満”という曖昧な関係を、私はいつももどかしく思っていた。
本当はもっと近づきたい。
“恋人未満”という肩書は、”恋人”へ昇格できる確実な保証ではないのだから。
長く続いた曖昧な関係は、一歩先へ進むことを戸惑わせるものがあった。
もし、銀ちゃんに拒絶されるようなことがあったらどうしよう、と。
“恋人未満”と思っているのは、私だけだったらどうしよう、と。
だから私はハロウィンを利用した。
本当は銀ちゃんが好きそうなコスプレで喜ばせたかった。
そして、いつもと違う自分を演出して私をアピールしたかった。
しかし、急な仕事のせいで実行に移せず、私は別の作戦をとることにした。
今考えれば、あまりにも遠回りな持って回った方法だったと思う。
それでも、銀ちゃんが同じ気持ちならきっと気付いてくれるはずだと信じていた。
“ぐうたらなジャック”への道しるべの意味を無事に悟ってくれた銀ちゃんが、私の家にまで来てくれた時は本当に嬉しかった。
なのに、なんでそこからうまくいかなかったんだろう。
クリスマスの時もそうだ。
銀ちゃんはぐでんぐでんに酔っぱらっていたけれど、それでも喜んでくれるならばと恥ずかしい思いを我慢してサンタのコスプレをしたのに、そこでもやはり何も変わらなかった。
バレンタインだって本命チョコを用意して銀ちゃんしかいない万事屋を訪れた。
万事屋でチョコを渡すことはできなかったけれど、ワンテンポ遅れて私の気持ちに気付いた銀ちゃんはまた追いかけてきてくれた。
なのに、なんで私たちはまだ”恋人未満”のままなんだろう。
私はずっと、次のステップを―――”恋人”になれる日を待っているというのに。



「…という感じなはずだ。絶対そうだ。うん。間違いない。」
「結局全部アンタの妄想かよ!」

人差し指をピンと立てて断言すると、新八から全力のツッコミが入った。

「うむ。複雑な乙女心というやつだな。お妙さんを始めとした女子という生き物はとかく恥ずかしがり屋で素直になれない。彼女たちの真意を正確に汲み取ることが、俺たち男の務めだ。」
「そうですね。女性の気持ちは表面だけではわからない難しさがありますから。たまさんのように穢れない笑顔を浮かべていても、どこかで悩みを抱えていることもあります。誰よりも早くそれに気付き、陰ながらサポートするのが男というものでしょう。」

社長机を挟んだ向かい側でゴリラとジミーが深く頷いた。
女心は複雑怪奇。
一筋縄ではいかないものだ。

「そうよ、銀さん。女はいつもミステリアス。秘密がアクセサリー。さあ、暴いてごらんなさい!身体の隅々まで暴いたらいいじゃないの!!」

何故か亀甲縛りの状態で天井からさっちゃんが落ちてきた。
俺は何も見なかったことにした。

「またストーカーが増えたナ。そろそろ万事屋銀ちゃんは”ストーカー寄合所”に改名した方がいいアル。」

酢昆布をくちゃくちゃと噛みながら神楽が呟いた。
失礼な。
裸一貫で俺が一から作り上げた万事屋銀ちゃんを、そんな得体のしれない寄合所に改名するなど不本意極まりない。
第一、 俺はストーカーではない。

「ふざけんな、神楽。俺はこいつらと違って完全な一方通行じゃねーから。ちゃーんと●●から本命チョコも友チョコも全部貰った約束された存在だから。」
「約束って…何を約束されてるんですか?」

新八が怪訝な面持ちで俺を見た。
俺は、自信をもって答える。

「そりゃあ、もちろんアレだよ。うん。本命チョコの交換をするくらいだから、●●の本命ポジションを約束されたみたいな…そういう立場的なアレだといいなあ…なんて。うん。そんな感じだ。」
「…で?現実は●●と”本命”っぽいこと何かしたアルか?」
「………してねェよ!悪かったな!チクショー!!」

俺は頭を抱えて机に突っ伏した。
バレンタインに本命チョコの交換をして以来、一度も●●と会っていなかった。
本命チョコを交換した際、またしても俺と●●の間で決定的な言葉がなかったことが主な原因だ。
本命だとわかりながらも、俺たちはそれを口にしなかった。
無事に渡せた達成感を味わっただけで、その先に言うべき言葉がなかった。
そのおかげで更に微妙な距離感を生んでしまったのである。
俺は何度同じことを繰り返したら気が済むんだろうか。

「いやいや。このくらいで絶望してたら男が廃るぞ、万事屋。意中の女性に何か貰えるという行為に感謝し、愛を感じるくらいじゃないと。」
「近藤さん。アンタが姉上から貰ってるのは愛じゃなくて憎悪が込められた鉄拳ですからね?」
「そうですよ、旦那。たとえ形ある愛が返ってこなくても、それでも一途にこちらから愛を贈り続ける忍耐力こそが、男に求められるんです。」
「ジミー。いい加減たまを監視するのやめろヨ。視線が気持ち悪いネ。」
「会えない時間が愛を育むのよ。同じ空間に存在して同じ空気を吸える喜びを噛み締められるようになるのも、全てそこに2人の愛があるから!」
「勝手に人ン家に侵入してきて無理やり同じ空気吸ってるだけだろオメーは。」

口々に己の恋愛観を語るストーカー共にツッコミを入れると、『言っとくけど銀ちゃんも似たようなモンだからナ』『崖っぷちですからね』と、心外なことを神楽と新八から言われた。

「ちゃんと踏みとどまってるわ!俺は●●の家の軒下に隠れたこともねーし、●●の名前だけを延々と書き連ねた怪文書を書いたこともねーし、亀甲縛りで●●ン家に侵入したこともねーし!!」
「それ、人として当たり前のことですからね。そんな変態行為はしないのが普通ですから。」
「そもそも中途半端なところで踏みとどまり過ぎて何もしないから、銀ちゃんと●●は進展がないアル。いつまでもチンタラしてんじゃねーよ。」

身の潔白を訴えれば、二人から反抗期のような態度を取られた。
可愛げがない。

「で?銀さん。ホワイトデーはどうするんですか?」
「…。」
「ノープランか。やっぱりヘタレアル。」

お前らいい歳した男を虐めてそんなに楽しいのか。
思わずいじけたくなった俺の無言の眼差しに、ガキ共はこれ見よがしにため息を吐いてくれる。
だって、仕方がないだろう。
綿密な計画を立てて挑んだ過去3回のイベントは、全て目的を達成しないままに終わっている。
計画そのものが頓挫したり、俺の意図が●●に伝わらずに空回りしたり。
●●との仲は深まるどころか徐々に遠のいているような気さえする。
次に下手を打つと、もう恋人未満だとかスイーツ仲間だとか、友人関係すら危うくなるかもしれない。
歳をとると人間は憶病になるのだ。
勢いだけではどうにもならないことが多々ある。

「…いい加減決着をつけてもらわないと、こっちまでイライラするアル。」
「うっせェ!お子様に言われなくてもだな、そんくらい俺が一番わかって…」
「ホワイトデーは●●の仕事休みネ。」
「………え?」

俺を煽り立てるような言葉ばかり並べていた神楽から、予想外の台詞が飛び出した。

「だから、●●にホワイトデーは休みをとるように頼んでおいたヨ。感謝するヨロシ。」
「…マジで?」
「マジです。●●さんにホワイトデーは万事屋に来て貰えるようにスケジュールを調整してもらいました。」

やれやれ世話がやける、と大袈裟に首を振って見せる新八に噛み付く余裕もなかった。

「銀さんの作戦は毎回ただの妄想ですからね。今回は強力なアドバイザーを手配してあります。」
「ハァ?アドバイザー?中学生の初恋じゃねーんだから、そこまでお膳立てしてもらう必要なんてねーんだけど。」
「中学生レベルの妄想しかしてないおっさんが贅沢言ってんじゃねーよ。」

神楽の辛辣な言葉に被さるように玄関のチャイムが鳴った。
家主が何も返事をしていないのに、勢いよく玄関の戸が開かれる音が聞こえる。
どすどすと荒い足音が近づいてきた。

「アドバイザーが来たアル。」

神楽と新八が顔を見合わせて頷いた。
二人が呼んだ”アドバイザー”に全く見当がつかない俺は、首を傾げる。

「おい。オメーら一体誰を呼んで…」
「近藤さん!山崎ィ!こんなところでいつまで油売ってるつもりだ!」

玄関から居間に続く戸が開け放たれると同時に、罵声が響き渡った。
額に青筋を浮かべながら駆け込んできた大串君が、”アドバイザー”の正体だった。

***

なんでよりによってこのマヨラーがアドバイザーなんだ。
そう文句を言えば、モテる男にアドバイスを貰うのが一番アル、と返ってきた。
しかし、当のアドバイザーは完全に騙されて万事屋に誘き出されたようだった。
真選組のストーカーを回収しに来い、と神楽から連絡を受けたらしい。

「…とりあえず、当日は僕たちが隣の部屋に隠れて指示を飛ばしますから、銀さんはフォロ方さんのアドバイスに従ってください。」
「何で俺がマヨ方のアドバイスなんて受けなきゃならねーんだよ。」
「うるせェ。俺だって不本意だ。」

眉間に皺を寄せた土方が心底嫌そうに言った。

「テメェがストーカーを卒業してくれねェと、ウチのストーカー共が調子付くんだよ。」
「誰がストーカーだコノヤロー。お宅のストーカー共の素行の悪さを人のせいにするのやめてくんない?」
「…最近、近藤さんは志村家やすまいるに行く回数が減った代わりに、山崎と一緒にここでたむろってるらしいじゃねーか。ここがストーカーの温床になってんだよ。」
「そうですよ。銀さんがヘタレてるせいで近藤さんたちが仲間を見つけたと思って勢いづいてるんですよ。姉上へのストーカー被害が悪化している原因の一端を、銀さんも担っているんですからね。」
「…いや、完全にそれ責任転移だろ。俺悪くねーだろ。俺とは関係なくコイツら元からストーカー気質だっただろ。」
「とにかく」

銀さんの妄想と計画は何の成果も挙げられないことは実証済みなんですから、指示に従ってください。
これ以上●●との関係が悪化することはないんだから、大人しく言うこと聞けヨ。
有無を言わせないガキ共の迫力に、俺は屈した。
…こういう押しの弱さがこれまでの敗因だったのではないか、と思い当たったのは、新八たちが打ち合わせを終わらせた後になってからだった。

***

そうして迎えたホワイトデー当日。
万事屋の居間で応接机を挟み、俺は●●と向かい合っていた。

「銀ちゃん、久しぶりだね。一ヶ月ぶり?」
「…お、おう。そうだな。」

どこか困ったような笑みを浮かべた●●に、俺も曖昧に返す。
俺たちの会話は隣室に隠れている”アドバイザー”たちに丸聞こえなのだと思うと、不用意な発言はできない。
しかし、そんな俺の対応にさっそく指導が入った。

「笑顔が固いですよ。銀さん。」
「そんな変な顔してるから、バレンタインも●●が勘違いして帰ったことを忘れたアルか。」

人の顔にまでケチをつけるな。余計なお世話だ。
片耳に装着しているイヤホン越しに聞こえてきたダメ出しに、ひくりと俺の口元が引き攣った。
隠れている連中に文句を言ってやりたい衝動をなんとか抑える。

「あのね銀ちゃん。今日はホワイトデーだからお菓子持ってきたの。」

俺の苛立ちを他所に、●●は控えめな笑顔を見せながら小さな包みを取り出した。
机の上に並べられたのは、3つの小袋。
にわかに嫌な予感がした。

「なんで3つもあるんだよ?」
「好きなのを選んで欲しいから。」

俺はごくりと唾を飲み、慎重に●●の表情を伺う。
●●の笑顔からは、何も読み取れなかった。

「…中身は何か聞いてもいいですかね?」
「右から飴、クッキー、マシュマロ。」

ホワイトデーのお返しの王道3つが並んでいるらしい。
3種類の菓子の中から1つを選ばせることで、●●は何を推し量ろうとしているのか。

「…1個だけしかくんねーの?」
「うん。1個だけ。」

俺は、慎重に考察を始める。
この中で最も手作りの可能性が高いのはクッキーだ。
飴やマシュマロを手作りすることが不可能なわけではないが、作り手の個性やメッセージを入れやすいのは間違いなくクッキーである。
“好きだ”とか”付き合ってください”だとか、そういった文字を書くならこれしかない。
俺は、クッキーが包まれている真ん中の包みに手を伸ばそうとした。

「それはダメです!」

イヤホンから新八の静止の声が聞こえると同時に、頭に激痛が走った。
頭を押さえながら足元に目をやると先週号のジャンプが落ちている。
隣室から神楽が投げ込んだらしい。

「銀ちゃん!?ど、どうしたの!?」

突然頭を抱えて悶えた俺に、●●は驚いたように声を上げた。
どうやら、神楽の投げた剛速球は●●の動体視力では捉えられなかったらしい。
隣室から高速でぶつけられたジャンプの存在に●●が気付いていないことに安堵した俺は、慌ててなんでもないとアピールした。

「あ、いや、ちょっと昨日飲み過ぎて二日酔い気味で…。」
「銀さん、ホワイトデーでクッキーをお返しするのは『あなたと友達でいましょう』という意味だそうです。クッキーを選ぶのはアウトです。」

しどろもどろに誤魔化しているとイヤホンから新八の解説が聞こえてきた。
そっと隣室を伺うと腕組みをして難しい顔をした土方と、両手でバツ印を作りアピールする新八と神楽が見えた。
なんだそれは。
クッキーはホワイトデーのお返しの定番じゃないのか。
世間の男共は、”このままの関係でいましょう”という意味でクッキーを贈っているのか。
そんな馬鹿な。

「えーっと…1個だけ貰えるんだったな?」
「うん…。」

俺は、再び思案した。
クッキーがダメならマシュマロか。
なんて言ったって”ホワイト”デーだし、マシュマロが無難なのか。
俺は左端の包みに手を伸ばした。

「駄目アル!」

再び頭に衝撃が走る。
今度はマガジンが足元に落ちていた。
万事屋にマガジンは1冊も存在しない。
となれば、このマガジンは土方が持参したものか。
暇つぶしの道具持参とは本当にアドバイスする気があるのか、アイツ。

「マシュマロは『あなたのことが嫌いです』って意味アル。選んじゃ駄目ヨ。」
「ハァ!?」

思わず俺は立ち上がった。
何で愛の告白を受けるバレンタインデーへのお返しが『嫌いです』なんて意味を持つんだ。
大体クッキーとマシュマロはホワイトデーのド定番じゃないのか。
世の男のほとんどは女たちの好意を袖にしているのか。
なんて贅沢な。

「ぎ、銀ちゃん?どうしたの?本当に…」
「あ…。いや、アレだよ。酒が残ってるせいでちょっとぼんやりしてるから喝を入れようかと…。」
「…銀ちゃんから大切な話があるって新八くんに言われたから来たんだけど。大切な話の前日にどれだけ飲んだくれてきたの。」

●●の視線が鋭くなったような気がした。
俺は冷や汗をかきながら笑って誤魔化す。

「正解は飴だ。ホワイトデーのお返しに飴を渡すと『あなたが好きです』という意味になる。飴を選んどけ。」

こちらの動揺などどうでもいいと言わんばかりの淡々とした土方のアドバイスに、俺は地団駄を踏みたくなる。
だったら最初からそう言えよ。
そもそもお返しの菓子の細かい意味をそこまで知っている土方は一体何者なんだ。
女子中学生か。
それともホワイトデーのお返しがらみで過去に何かやらかしたことでもあるのか。

「…銀ちゃん?私の話聞いてる?ねえ、銀ちゃん!」
「…ん?お、おう。ちゃんと聞いてるって。」
「…嘘つき。もういい。」

隣室を睨んでいると、大きなため息が聞こえた。

「私、帰る。」
「…え?」

●●は帰り支度を始めた。
もしかして、これはバレンタインの時と同じパターンではないのか。

「ちょ、ちょっと待て!」
「…なに?」

隣室には誰もいないと自分に言い聞かせながら、俺は●●の手を握り引き留めた。

「いや、だからですね…。」
「…なに?」
「あ、飴!銀さんは飴が欲しいです!!」
「そう。…その心は?」
「へ?」

真っ直ぐな視線が突き刺さった。
目の前の●●と、隣室に隠れている3人から。
うおおおついに告白タイムネ。
駄目だよ神楽ちゃん静かにしないと。
もう帰っていいか。
イヤホンから聞こえてくる外野の野次に俺は舌打ちしたくなる。
この状況で、オーディエンスが聞き耳を立てている状況で、●●に愛の告白をしろというのか。

「…。」

沈黙が続いた。
●●は確実に俺の言葉を待っている。
イヤホンからは、告っちゃえよ!という中学生みたいなコールが聞こえてくる。
心底ウザい。

「…アレだ。俺ばっかりお返し貰うのはおかしいな。うん。」
「…は?」

●●は首を傾げた。

「バレンタインに俺も●●からチョコ貰ったじゃねーか。だから俺も●●にお返しするわ。」

俺はイヤホンを外すと、隣室に向かって思い切り投げつけた。

「俺はオメーさんから飴を貰う。俺もオメーに飴をやる。これで解決だ。買いに行くぞ。」
「…何が解決なの?」
「…オメーのプレゼントは持って回ったものが多過ぎるんだよ。素直に銀さんが好きだって言えよ。」

もうやけくそだった。
俺は●●の手を引き、玄関に向かった。

「銀ちゃんがはっきり言ってくれないから悪いんじゃない。」
「うっせー!オメーが変なところでとぼけるから悪ィんだろ!」
「責任転移しないでよ。男らしくない。」
「オメーだってひねくれ過ぎだっての!可愛げがねェんだよ!」

文句を言い合いながら万事屋を出る。
お返しの意味だとか、大義名分だとか、もうどうでもいい。

「ねえ。ホワイトデーのお返しの意味、銀ちゃんは知ってるの?」
「知らねーよ!」
「じゃあ、なんで飴が欲しいの?」
「オメーが飴を取れって感じの念をバンバン送ってくるからだ!」
「また人のせいにして…」
「じゃあ、なんて言ったらオメーは満足するんだよ!」

決まってるじゃない、まだわからないの。
俺に手を引かれたまま、●●はふてくされたような声でそう言った。
わからないわけがない。
俺が言おうとしている言葉がわからないほど、お前は馬鹿な女じゃないだろう。
お前が欲しがっている言葉を俺がわかっていないと思い込むほど、お前は俺を知らないわけではないだろう。
お互いに、欲しい言葉も言いたい言葉も全部わかっているんだ。
それに気付けないほど、俺たちの仲は浅くない。
では、なんでここまでこじれてしまったのか。

「言っとくけどな、俺はコスプレエッチも好きだしチョコプレイも好きだからな!」
「…何の告白をしてるの。銀ちゃん…。」

●●と往来を歩きながら俺は大声で怒鳴った。
道行く他人の視線など、もう気にしてはいられない。

「でもミニスカ魔女もミニスカサンタの格好も俺の前限定だからな!俺、束縛するタイプだから。他所でそういう格好するの許せないタイプだから!」
「だから何の話!?」
「オメーじゃなきゃそういうプレイもしたくねェって話だよ!分かれよバカヤロー!!」

俺は振り返りながら大声で叫んだ。
視界の端で、追いかけてきたらしい新八と神楽、土方の呆れたような顔が見えた。
●●はポカンとした顔で俺を見上げている。

「…セフレ宣言?」
「んなわけあるかァァァ!」

なんで惚れた女に身体の付き合いだけ申し込まねェといけないんだ!
全部寄越せよコノヤロー!!

周囲の視線に耐え切れなくなった俺は、恥ずかしすぎる台詞を叫び上げると、再び●●の手を引いて走り出した。
もう●●の答えなんて、聞く必要はない。


お節介な外野を巻いたら、●●と菓子でも買いに行こうか。
そして、互いの腹を探り合うのはもう終わりにしようと言えばいい。
こうやって手を変え品を変え互いの真意を探り合うほどに、俺たちは互いの存在が気になっていることはわかりきっているのだから。


クッキー、マシュマロ、飴のお返しの意味は固定されているわけではないようです。
そういう説もあるということで。

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