Novel
愛と犯罪の境界線
その日瑞希が帰ると、どこか家の様子が違っていた。
出かける前と物の位置が微妙に変わっていたり、閉めたはずの扉がかすかに空いていたりその程度ではあるが。
1人暮らしの瑞希の家に入る人はいなく、スペアキーは無い。
玄関の鍵も窓もきちんと閉まっていたので、空き巣の可能性も低い。
と、なると
「…ローのやつ」
一応瑞希の彼氏であるロー。
こいつが何らかの変態的手段で部屋に侵入したとしか考えられない。
前々からローが家に遊びにくる度に瑞希の下着やら歯ブラシがさりげなーく無くなっていく。
だからスペアキーを渡さなかったのに!
そんなローが侵入したとなっては今回も必ず何かが無くなっているはずだ。
「…お気に入りのやつだったらぶっ殺す。」
瑞希は無くなった物は無いかと確認するため下着類が閉まってあるクローゼットに手をかけ、はぁとため息を吐いた後、怒りに任せて勢いよく開けた。
バァーンと音を立てて開いたクローゼット
そこには
「ハ…ハッピーバースデー瑞希ちゃん」
大きな身体を器用に折りたたんで、クローゼットの中にぎゅうぎゅうに詰まる…
クリエルが。
ついでに頭にはいつものスイカ帽子ではなく、瑞希のしましまパンティ。
「だ…誰よりも先に祝いたくて、誕生日の今日こうして待っていた。決してパンツを盗もうとかいうわけではなくてただ瑞希ちゃんの喜ぶ顔が見たかっただけであの」
「わざわざどうもありがとう。」
瑞希はそのままま静かにクローゼットを閉じ、携帯の1、1、0のボタンを手早く押した。
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「ってことがあってね」
「そうか、無事で何よりだ瑞希」
「下着ドロを疑ってゴメンね、ロー」
「いや何、その考えはあながち間違いではな…待て瑞希、携帯を置け」
【愛と犯罪の境界線】