Novel
特別と知れば怖くなります故
※エース視点
オレの大学の友達で医者になろうと勉強しているやつがいる。
変わったやつで、医者を目指すくらいだから頭はいいし、金持ちだからモテるモテる。
ハート製薬会社のお坊ちゃんで、女子たちがあいつと結婚したら将来は玉の輿だって騒いでた。
でも、あいつ、トラファルガー・ローは一人にしか興味ないのをオレは知っている。
「エース、ノート助かった」
オレの受けてた講義に興味があるって言うからノートを貸したら、わざわざバイト先に返しに来てくれた。
貸した後で気づいたんだけど、明日も講義あるの忘れてて困ってたんだよな。
「おお、サンキュ!なぁなぁ、食ってく?サッチの作る飯はすっげぇ旨いんだぜ!」
「あぁ」
「なまえも一緒だろ?」
ややげんなりとしたなまえは右手を上げた。
ローがしっかり手を握っているので、ローの左手も当然上がった。
「みたいよ?」
「相変わらず仲いいんだな」
「…本気で言ってる?」
ローがご執心なのがなまえ。
一緒にいるときは、なまえがローに用がある時か、ローがなまえを捕まえるのに成功した時だ。
だいたい後者の方が多い。
ちょっと前に手錠でお互いをつなごうとして、ローの友達のペンギンがそれは犯罪っぽいから勘弁してくれって懇願してたな。
なまえが普通にしてくれれば逃げないって言ってたけれど、ローはちょっと変わっている。
ローが目指しているのは外科医。
興味の対象も、そっち方向に向かうことが多い。
一目ぼれだかでなまえに近づきだした頃は良かったんだ。
瑞希だってまんざらでもなかったし。
でもある日、本性が出たというかなんというか。
『なまえを解剖してみたい』
素面でそんなことを言い出したんだとか。
たぶん、いろんな意味でなまえのことを知りたいって言いたかったんだろうけどなぁ。
冗談じゃなさそうな雰囲気でそんなことを言われて、身の危険を感じたからなまえは全力で逃げたらしい。
それが良くなかったのか、ますます追いかけるようになって一緒にいるときは強制的に手を繋がれているんだとか。
ローは、愛情表現が下手糞だからなー。
普通に好きだとか言えばいいのに、照れも入って愛の告白が変な方向に捻じ曲がっていく。
なまえのことを特別に思うって口走ってからは拍車がかかった。
『気を楽にしろじゃないよ。本当にこわかったんだから!』
前になまえが泣きながら愚痴ってた。
その日は、それまでいい雰囲気だったのに、急に恐ろしいことを口走り始めたんだとか。
『…あれさえ無ければなぁ』
最後にはそんなこと言っていたから、その場にいたペンギンと二人でローはこういうことを想ってと一から説明をしてフォローしてからは、少しずつ理解が得られていると思う。
なんとなく、なまえも歩み寄っている。
ビクビクしながら。
「手、離してくれないと食べれない」
「俺が食わしてやる」
どうせ手をつないだままなんだろうと思って、なまえに箸のほかにフォークも用意してやったら全部ローが握っていて、なまえに食べさせようとしていた。
「エースの友達、すっげぇ…ラブラブなのな」
「仲良しだろ?」
サッチもどういう関係か察したようで、微妙な表情で二人を見ている。
なまえは、文句言いたそうにしつつも、諦めてちゃんと口開けて食べさせてもらってる。
彼女、本気でローに怒ったりしないあたり…。
【特別と知れば怖くなります故】
まぁ、うん。
変な関係の二人だよな。
title by ポケットに拳銃