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お礼文@potcより林檎船長(※とう○ぶパロ)


今日はずいぶんと寝苦しい。
くるりと寝返りを打って、うっすらと目を開けたバルボッサは横にいたそれの存在に気がついて飛び起きた。

ばさりとシーツを剥げば、窓から差す月明かりの元ですやすやと眠る一人の少女の姿が浮かび上がる。

「うーん…寒い…」
ぺたぺたとベッドの上を触りながらシーツを探す細い手首を引っつかんでバルボッサは少女の顔を覗き込んだ。

「おい、起きろ」
うなる様に声を上げると長いまつげの下から紅玉のような輝きを放つ赤い瞳がのぞく。
その見知らぬ少女はしばらく片手を捕まれたまま夢心地の表情でぼんやりとバルボッサを見つめていたが、やがてひとつあくびをこぼして一言つぶやいた。

「あれ、黒ひげさんじゃないんだ?」

少女の言葉にバルボッサの警戒心はますます強まる。
元の船長である男の名を呼ぶからには、やはりこの少女は敵か――?

「っ誰だお前は…!いつからこの船に乗って」

「え、ここアン王女の復讐号だよね?ならもうずっと前から乗ってるけど?たぶんあなたがここ来るずっと前から」
「何?」

「っていうか最近ずっとわたしと一緒にいたじゃない。この姿で会うのは初めてだけど、昼も夜もそばにいてあげたでしょ?」

赤い瞳に覗き込まれてふと既視感を覚える。
この独特な赤い色は、確かにどこかで…

「…念のために聞くが。お前はトリトンの剣と何か関係があるのか、小娘」

少女は腰に手をあて、薄い胸を張った。

「ようやく分かった?かの幻の大陸アトランティスで作られたトリトンの剣とはわたしのことだよ!」

「証拠は?」

驚くでもなく喜ぶでもなく、険しい顔を崩さないバルボッサを少女はじとりと睨む。

「…ずいぶん疑い深い男だね。まあいいけど」
そう言うやいなや、いきなりベッドから飛び降りたかと思うとすたすたと船室の入り口へと歩いていく。

「おい、何をする気だ!」

逃げられてはたまらないとバルボッサもベッドを抜け出し少女を追った。
勢いよく扉が開かれ、冷たい潮風が娘の髪を揺らす。

「見せてあげるよ。証拠」

にっと横顔だけで微笑んだ娘は細い両腕を伸ばし、空を切るように振った。
そしてそのままくるりとターンして右手をさっと横へ払う。

すると畳んでいたはずの右舷の帆が解けて大きくぶわりと広がった。

「!」
バルボッサの瞳が大きく開く。

今度は娘が左手を払うと左舷の帆が広がり、風をうけてばさばさと音を立て始める。

鼻歌を歌いながら指揮者のように拍子をとれば彼女の指先の動きに合わせてロープが踊った。

最後に甲板に出ていた大砲すべてを上空に向け、空砲を撃ち鳴らす。

どんっと腹の底に響くような音が消えると娘は手を動かすのをやめ、くるりと振り返った。

「どう?これで分かったでしょ。わたしは海の神の力を授かりしトリトンの剣。よろしくね、新しい船長さん」

黒ひげから奪った剣に、まさかこんな秘密があったとは。
一連の騒ぎにようやく寝ぼけなまこで出てきた海賊たちがバルコニーを見上げ、見知らぬ少女の姿に指をさして騒ぎ出したのを見てバルボッサは大きなため息をついた。


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