夏蜜柑の陰にて 忘れさせてください 手放した梅雨 十七日の蜻蛉 ゆがみ傾く 白煙と霞む微笑 涼やかだと言った誰か 濡れた黒を渡る そう、向こうでね 初夏をなくした暦 留まれぬ場所 冷たい清らかに消える 樹上の余熱 音のない陽光 見ててねと幼き声の 定まらず消えもせず あざやかに霞みて 帰るべき場所 有難うと言った声は それでも違わぬあなたのものでした