四季イベント | ナノ


▼ バレンタインデー

佐藤瑞貴(さとうみずき) 風紀委員長
阿部正倫(あべまさみち) 生徒会長
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「さ、佐藤…!」

 いつもの自信に満ちあふれた声とは違う、緊張した声が自分の名を呼んだ。

「どうした?」
「……あ、のさ…」

 やはりどこか自信なさ気な声と俯く顔に、思わず顔が訝しんだ。
 一体なんだ、この状況は。
 正倫の常とは異なる姿を疑問に思い、今日は何かあったかと考えると、今日はこれが初接触だとふと思い出す。
 いつもは朝に挨拶を交わすが、今日は親衛隊に囲まれていた正倫はそれどころではなさそうだったから声はかけなかった。その後も、俺たちはクラスは違うからまず会わないし、昼休みも正倫が食堂に来なかったから会ってない。
 放課後は、風紀委員長である俺は浮かれた奴らを取り締まっていたため、思ったよりも終わるのが遅くなり、いつものように生徒会室には顔を出さなかった。

 で、まあ冒頭に戻るわけだが。

「こんな遅くまで珍しいな。仕事か?」

 尋ねるとふるふると頭を振り、否定された。

「えっと、これ…」

 おずおずといった感じに上がった顔と発せられた言葉。次いで差し出される物。
 そういえば、今日はバレンタインデーだ。取り締まりが忙しくて忘れていたが、親衛隊が騒いでいた原因はこれだったのか。

「ほ、ほんとは、もっと早く渡したかったんだけど、邪魔が入って…」

 いつもの不遜な笑みはなく、吃りながら告げられた言葉。心なしか耳が赤くなっているように見える。

「なかなか佐藤に会えないし…渡せなかったらどうしようかと思った」

 さっきまでの頼りなさげな表情はどこへやら、安心したような顔で はい、と手渡されたそれ。

「お前みたいに料理がうまい訳じゃないから、味の保証はできないが、良かったら食べてくれ」

 そんな満面の笑みで言われたら頷くしかないだろ。

「ああ…さんきゅ。手づくり、か?」
「何にしようか迷った末の、かなり簡単なのだけどな」
「へぇ。中身、何だ?」
「チョコレートブラウニー」
「…それ、そんな簡単じゃねえよ…?」
「そうなのか?はじめて作ったが成功したぜ?」

 どうやら作るのが楽しかったようで、嬉々としてその時の様子を話す正倫。それを聞くとこちらも嬉しい。

「まあ、お前が楽しそうで何よりだ。そうだ、今度、一緒に何か作るか」
「! いいのか」
「もちろん」
「楽しみにしてる!」

 何を作ろうかと話しながら、並んで歩く。
 ──ああ、こいつの手料理を食べるのが楽しみだ。



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イベント毎に出しやすい甘党会長と委員長。
蛇足ですが、個人的に、トリュフやブラウニーなどでチョコレートを使うときは、ミルク:ブラック=2:3の割合が好きです

はっぴーバレンタイン!
2013.02.14

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