▼ 大晦日
──もう少しで、今年が終わる。
今年最後の全校集会から、早いものでもう1週間が過ぎた。
冬休み中は12/29から1/3まで学園が完全に閉鎖されるため、生徒全員が帰宅しなければならない。その上俺は親の会社で行われるクリスマスパーティに参加しなければならなかったので、集会終了後すぐに学園を出た。急いで準備して、あいつと会う時間も取れずに迎えの車に乗り込んだ。
だから、会うのは一週間ぶり。
メールはもちろん、電話だってした。でも、やっぱり直接話したいし、触れたい。
そう思う気持ちは日毎に増してゆき、やっと来た今日は一日中そわそわしていた。そして時間が近づけば近づくほど居ても立っても居られなくなって、早めに家を出た。そのため約束の時間よりも随分早くに着いてしまったが、まあ仕方がない。
一応辺りを見回すが、やはりあいつはまだ来ていなかった。
手持ち無沙汰になった俺はとりあえずぶらぶらする事に決めた。ここは祭りの時みたいにたくさんの露店が立ち並んでいる。祭りの時ほどとはいかないが、やはり人で賑わっていた。
ぶらぶらと歩いているうちに、匂いにつられてか少し小腹が空いたので、手近にあった大判焼きの屋台で小倉をひとつ。温かいそれは、少し冷えた身体を中から温めてくれた。
大判焼きでほくほくしながら、ふとケータイを取り出して時間を確認すると約束の10分前。
そろそろ来るかもしれない。
期待を持って少し足早にさっきの場所に戻るが、まだあいつの姿は見当たらないかった。
ふう、とひとつため息が出た。吐いた息は白い。かなり冷え込んできている事に、今更ながら気がついた。
──早く来ないかな。
そう思ったのとほぼ同時に肩にかかる重みと背中の温もり。そして嗅ぎ慣れた香水の匂いに思わず胸が踊った。
あいつは待たせて悪いと謝ったが、約束の時間前。俺が勝手に早く来て待ってたんだから、謝らなくていいのに。
そう言ったら、あいつは無言で俺の手を包み込むように握った。冷えていた手がじんわりと温まる。
尚も申し訳なさそうにするあいつに大丈夫、と微笑んだ。
だってほら、こんなにあったかい。
2012.12.31
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