ふぁっと甘い声が鼻腔を掠めた。ちゅくちゅくと唇を啄むだけだった口付けはいつの間にか互いの唾液が混ざり合う程に深く熱いものになっている。耐えられずに口を離そうとしたシズちゃんの後頭部を押さえ込んで、息をする為の隙間さえも惜しむように再び舌を絡める。んっんっと仔犬が鳴くような音が熱情を孕んでいるような気がして、欲が腹底から込み上げて来る。マナー違反かと思いつつ、まあ俺達の間にマナーなんてそんなもの無いんだろうけど、薄く目を開くと眉間に皺を寄せていたいくらいに眼をきつく瞑って必死に俺の舌に合わせようとしているシズちゃんの姿。嗚呼やばいなあ。かわいい。俺も末期かなあなんて考えながらシズちゃんの舌をぢゅくっと吸ってやれば、腰をびくびくと震わせて俺の服の裾をきゅうと縋るように掴む。嗚呼馬鹿だなあシズちゃんそんなかわいい事したら襲うよう、なんて不埒な事を考えて。それはちょっとシズちゃんが可哀相だったので漸く唇を離すと、離れた舌と舌が名残惜しげにつうと糸を引く。唾液が伝う口許から覗く真っ赤に熟れた舌に食欲に似た性欲が沸騰しそうになる。うわあシズちゃんきみってなんでそんなにえろいのお、なんて。蕩けた目に映る俺の姿が歪んでいることに殊更機嫌が良くなって、目許をべろりと舐め上げると、


「ふ、ふっ、ざ、けんなああああああ」


なんて叫んで盛大に俺の左頬に紅葉を咲かせて部屋から出て行った。俺が吹っ飛ばなかったあたりシズちゃんは手加減してくれたようで、嗚呼愛を感じるなあと口角が吊りあがっていく。いたいなあ、と切れた口許に滲んだ血を舐めると、さっきからきりきりと鋭く視線を突き刺して来る波江がざまあみろと鼻で笑うのが聞こえた。






わるあがきを夢見る






(100426)
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -