ミッドナイトデート







ミッドナイトデート







ブオン。ブオン。バイクの激しい音がして七恵は振り返る。「よ、」なんて聞きなれた声がすれば、ヘルメット越しでも相手が誰だか分る。黒いジャケットと黒のパンツ、レモンイエローのシャツにキザに右手を人差し指と中指立てて軽く振る仕草。そんなことをするのは一人しかいない。



「はるかさん、何してるの」

「我らが守護者をデートに誘いに、ね」

「その格好は?」

「ん?フォーマルなものだよ。相応しい場所にいくのに、さ」

「…私、普通の格好なんだけど」



ミリタリー系定番カラーのカーゴパンツに薄いブラウンのカーディガン、白いシフォンブラウス。ラフで軽い服装。黄色いバッグ引っさげたそれはただの遊びの格好で、とても彼(今は男モード)の今の格好に相応しくない。だがはるかは気にもせず七恵に白いヘルメットを一つよこすと後ろに乗れと合図する。



「みちるとせつなが待ってるよ。あっちで君の服も用意してる」

「用意周到だ事…分った分った。その代わり帰るときもちゃんと送ってよ」

「明日は子猫ちゃんたちとデートかい?」

「まあね。だから、もしそのままお泊りなんてことしたら…お仕置きよ」

「怖いね、僕らの女神は」

「あら、そんな私嫌い?」

「いいや、―好きだよ」

「ふふ、じゃあいいじゃない」



後ろに乗り込みヘルメットを被り、鞄が落ちないようはるかと自分の間においてはるかに抱きつき固定すればバイクを発進させたはるかろ見上げて少し大きめの声で尋ねる。



「洋服ってどんなのー?」

「とびっきり僕好みでみちるのメイクのしがいのあるやつ、だよ」

「それってまさか露出度高いんじゃないでしょうね」

「背中は開いてる、かな」

「バカ」



ぎりぎりと腰にまわした腕に力を込めれば「ごめんごめん」と謝られる。ふんっとそっぽを向いてバイクを走らせれば、15分後ドレスを見た七恵が背中のぱっくり開いたシフォンドレスにぽかんと口をあけ、メイク道具を手ににこにこ笑うみちるにせつながごめんなさい、七恵…と哀愁漂わせ謝ることに、なる。







2011/06/04.SAT

「ミッドナイトデート」




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