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雨だ。


俺の顔に纏わりついてくる水滴。

被っている寮服のフードも意味を成さない。

雨は、嫌いだった。あいつを思い出すから。

何の役にも立たないと言って、本当は旱魃が厳しい国では崇められる程の能力であることも。


俺たちの国は砂漠に覆われている。

あいつの能力はまるで神に祝福されたかのような能力なのだ。

しかし、ユニーク魔法は簡単に人に教えていいものではない。カリムの父親も、その能力を商いに使うことはなかった。

俺はあいつに「無駄な能力だ」と言い聞かせた。

「オアシス…か。くくっ」

何故あいつだけいつも、光ある場所にいる。

「レオナ…」

視界の端にレオナの姿が入り込む。

「オーバーブロットした気分はどうだ。」

「さぁ…あなたと同じじゃないですか。」

レオナは俺に近づいて来た。

「キングス・ロアー…」

レオナが呪文を呟くと、俺とレオナの周りだけ傘を差しているかのように水滴がなくなった。

でも。

「何の真似ですか。」

ご丁寧に眼から流れる水滴だけは残してくれた。

「お前が泣いている姿を見たかった。」
「悪趣味な。…本当に、悪趣味…」

澄ました顔も出来なくなった俺を、レオナは何も言わずに抱き締めた。





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「おや、珍しいですね。ジャミルさんが雨の日に機嫌がいいなんて。」

「お前の顔を見るのは不快だがな、アズール。」

「相変わらず手厳しいですね。」

雨の日になると必ず機嫌が悪くなるジャミルに気付いていたのは、彼をずっと見て来たアズールくらいだろう。

そして今の彼が口笛を吹きそうなほど上機嫌なことも。

「嫌いじゃない。雨も。」

雨の窓辺がジャミルの瞳に反射し、光った。










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2020.08.05
記念すべきお礼SS1作目でした。
拍手をありがとうございました!

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