今までで最高のクリスマス

ハァっと息を吐き出す。
吐き出した息が白く染まるのをぼんやりと見ていた私は顔を冷やす風から逃れるように、巻いているマフラーに顔を埋める。
魔導院に来てから、既に日課となりつつある、皆のお墓に花を添える事。
季節は冬。
温暖なルブルムにしては珍しく冷え込む。


なまえ「おぉー…」


今日は一段と冷え込むなぁ、なんて思いつつ、裏庭に出た私は一面白銀の世界に花を抱えたまま目を輝かせた。
そして、急いで墓地へ行けば、そこも真っ白。
皆のお墓に積もった雪を悴む手で払い落とし、花を置いて回ると、すぐさま裏庭へと戻る。
まぁ、遊べるほど積もっている訳じゃないけれども、この世界へ来る前、大体五年前に見た以来の雪に知らずの内にテンションが上がる。
私はふと見上げた木に積もっている雪を見て、何だか落としたくなった。
思った事はすぐに行動に移す。
そそくさと木に近付くと、右足とバランスを取る為に両手を軽く上げる。


エース「こら」

なまえ「ありゃ」


勢いに任せて蹴ろうとしたら、突然後ろから両手首を掴まれて、少し苦笑い気味の声が頭上から降ってきた。
頭を後ろに倒して見上げると、苦笑いを浮かべたエースの顔があった。


なまえ「エース」

エース「何やってるんだ?」

なまえ「あのね、蹴って雪落とそうと思って」

エース「そんな事したらなまえが頭から雪を被って、もっと寒くなるぞ?」

なまえ「あ、それはヤダ」


エースの言葉に大人しく足を下ろすと「良い子」と頭を撫でられる。
たった一つ違いなのに、完全に子供扱いだ。


エース「なまえ、鼻赤くなってる」

なまえ「寒い。…うあ、鼻冷たくなってる」

エース「僕のマフラー巻いてあげる」

なまえ「え。マフラーにマフラーって、かなり重装備」


そんな私の言葉を無視するエースは、自分の巻いていた白いマフラーを私の桃色のマフラーの上からぐるぐると巻く。


なまえ「ふあっ、目しか出てないよ!」

エース「あ、なまえ、色がグラデーションみたいになってる」


「白と桃色と朱色」と私の首に巻かれてるマフラーとマントを指差しながら言うエースに、私も「あ、ホントだー」と返してから、ちょっと気になった事を聞いてみる。


なまえ「そういえばエース、何でここにいるの?」

エース「うん?」

なまえ「なんか今日、0組の皆、忙しそうだったから」


そう。今日一日、同じクラスの皆は何だか慌ただしく動き回っていた。
任務もやっと終わって、急ぎの依頼も無いから久しぶりに女子メンバーで買い物にでも行きたかったのに。


エース「うーん。ちょっとね…どうかした?」

なまえ「暇で暇で、ちょっとマクタイまで行こうとしたら、アレシアさんとキングに全力で止められた」

エース「絶対一人で行っちゃ駄目だからね」

なまえ「過保護ー」


「だって暇なんだもん」と少し膨れると、苦笑いを浮かべるエース。
あ、エースのこの顔好きだなぁ。なんて考えてると、エースに手を繋がれる。


なまえ「エース?」

エース「もう準備が終わってて、僕は一人で拗ねてるなまえを呼びに来たんだ」

なまえ「拗ねてない!…って、準備?」


純粋な日本人の私とエースとじゃあ足の長さが違うから、少し小走り気味になりながらエースに付いて行く。
ふと、エースの言葉で引っ掛かった事を聞くと、エースは笑顔で私を見つめて。


エース「クリスマスパーティー」


って。


なまえ「…クリスマス?」


こっちの月名で言うと、クリスマスは空の月25日。
今日は28日。とっくに過ぎてる。
口をぽかんと開けたままの私に、エースは言葉を続ける。


エース「ほら、任務で過ぎたから。少し遅くなったけど、0組の皆でパーティーしようって」

なまえ「…皆?」

エース「もちろんマザーも来るよ」


私は皆の気持ちに少し涙が出そうになった。
だって、私、クリスマスを楽しみにしてたから。




今までで最高のクリスマス




(セブンがケーキ焼いてくれたよ)

(やったぁ!セブンのケーキ美味しいから楽しみ!)

(あと、ナインとキングがなまえの為にツリー飾ってたよ)

(!!早く!エース、早くサロン行こう!)

(はいはい)


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