winter magic

白くて冷たくて…
それは、空からの贈り物




winter magic



「ねぇ、どういうことなの」

なまえは目線の先にいる男、クラサメに尋ねた。彼は読み耽っていた本から顔をあげ、窓の近くに立つなまえを見やった。

「…なにがだ」

主語が抜けている、いやそもそもに脈略がない。今まで会話していたかのような話の振られ方をしても困る。しかし返さないとなまえはきっと怒るだろう。そこで思い付いたのが、先ほどの一言。なまえは窓を指しながら口を開いた。

「外、おかしいと思わない?」
「外?」
「うん、これじゃ台無しだわ」

なまえの指の先を追って外を見れば、確かにものすごく降っている。溜め息を吐くなまえに視線を戻しながら、出掛ける用事でもあったのだろうかと考えた。

「晴れてなくとも外には出られると思うが?」
「ん、クラサメくんなんか勘違いしてない?」
「勘違い?」
「うん、多分勘違い」

どこで取り違えたのだろうか。二人の話題には窓の先の天気しかないわけで…それとも台無しとはまた違う話題だったのだろうか?結論が出ないまま考えあぐねているとなまえが再び窓を指した。

「晴れて欲しい訳じゃないの」
「天気が不満なんだろう?」
「そうなんだけどね、降ってるものが不満なのよ」

降ってるもの…あぁ、そう言われてやっとクラサメは理解した。なるほど、もう季節は冬なのだ。なまえが欲しがっているのは…

「雪が良かったんだな」
「折角冬なのにさ、こんなに寒いのにさ…雨なんだよ」

なまえは残念そうな様子で苦笑いをする。自分も釣られて苦笑いをしそうになるが、口許が隠れているため曖昧になりそうで堪えた。

「雪にならないかなー。積もったら楽しいだろうなー」
「降るかもしれないが積もるかは微妙なところだな」
「降るだけで我慢するよ。冷たい雨よりはテンション上がる」

降らないかな〜と窓に向かって呟くなまえ。雪を見るだけなら魔導院を出て見に行けば良いわけだが、なまえが見たいのは多分そういうものではないはずだ。雪か…確かに魔導院で見る機会は限りなく少ない。クラサメは読みかけていた本を閉じてしまった。集中できそうにないからだ。

「ねー、氷剣の死神さん」
「…なんだそれは」
「雨を雪に変えてロマンチックにして欲しいな〜?」
「無視か」

頭が痛い…何から突っ込めばいいのかわからない。クラサメはなまえを見て盛大に溜め息をついた。彼に溜め息をつかせる人間はなまえとカヅサくらいだ。誉め言葉ではないのだが、以前そんな話をしたら二人とも喜んでいた。理解したくもない、とクラサメは思考をこちらに戻す。

「…ロマンチックならいいのか?」
「え、やってくれるの!?」

なまえの驚いた目を見つめながら、席を立ちなまえのいる窓に近付くクラサメ。わくわくを隠せないなまえの様子が可愛らしい。クラサメは窓の前に立つと、なまえに目を閉じるよう言った。

「合図をするまで開けるなよ?」
「う、うん!」

大人しく目を閉じたなまえを確認し、クラサメはそっと自らの口許を覆うマスクを外した。そしてそれを脇にある机に置き、なまえを再び見る。瞳は静かに閉じられていて、早く開けたいのか時折睫毛が震える。クラサメはフッと微笑むと、なまえの唇に自らのそれで口付けた。

「な…なぁっ?!」

なまえがびっくりして目を開けると、不敵に微笑むクラサメが映った。訳がわからないと言った様子で、なまえは口をパクパクさせている。

「ロマンチックならいいのだろう?」
「どこが!なにが!えっち!」
「雪だ…」
「え…?」

クラサメを叩きながら抗議の声を挙げるなまえを宥めながら、なまえの視線を窓へと誘導してやる。確かに先程まで降っていた雨は白い雪へと変わっていた。

「まさか…クラサメくん、本当に?」
「さぁな」

クラサメの意地悪な笑みになまえが怒り、真実を聞き出そうと声を挙げたが、なまえに真実が告げられる前に、なまえの唇は再び塞がれた。外の雪は、先程より強くなっていた。






(積もるかもな)
(よぉし、カヅサ呼んで雪合戦だ!)
(…お前は幾つなんだ)

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隊長はキザなヤツだと思ってます。
恥ずかしい事を涼しい顔でこなしてしまうようなイメージ。
他2作品がぶっちゃけ冬じゃなくてもいいよね、な完成度なので無理矢理雪で冬らしくしてみました。

ひめの





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