Some day

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雪、降ってきたな。


思いのままに、教室から飛び出して。

ペリシティリウム朱雀からも出て。

ある平原までやってきた。

雪に気づいたのはペリシティリウム朱雀を出たとき。

もう、何を思って飛び出したのかも分からなくなった。
どうして飛び出してきたんだっけ?


「ああ、そっか。」


訂正。
思い出した。


「私、もう死にたくなったんだっけ。」


そう、死にたくなった。

こんなくだらない戦争を続けているくらいなら。

出撃して、死んでいく仲間を見ているくらいなら。

もういっそ、死んで楽に、何も考えなくてよくなりたかった。

死んで楽になることはないと知っていても。


自分の周りに降る雪と同じくらい儚い命。

今降る雪が命だとしたら・・・・・・もう何も考えたくない。


「・・・・・・なまえ!」


知ってる声が聞こえて、声のしたほうへ振り返った。

エース、エースがいた。

息を切らして、寒そうな格好で、走ってきた。

私に近づいてからはぁはぁと息を整え、整ったところで話をふってきた。


「なまえ、どうしてこんなところまで来たんだ?」

「・・・・・・走ったらここにきてた。」


適当な返事。

エースの質問への返事も、考えるのが億劫で。


「あてずっぽうにここにきたって言うのか?」

「・・・・・・」

「なまえ・・・」


もう、しゃべるのも億劫になってきて、私は無言でいた。

エースは何か悟ったのか、ぽんっと私の両肩に片方ずつ両手を置くと、「・・・なんでこんなことしたのか説明してくれないか?」と言った。

だから、しゃべりたくないんだって。

私は、真剣に聞こうとしているエースから顔を背けた。

また、無言。




「はぁ・・・」


エースがため息をついた。

そんなに嫌そうなら、私を追いかけてなんてこなければよかったのに。

反射的に、私はこの場から離れようとした。

うん。離れようとした。


エースから背を向けて。

ペリシティリウム朱雀からさらに離れた方へ行こうとした。

すると、エースががばっと顔をあげ、背を向けた私の腕を引っ張って、行くのを止めた。

私は『何さ』というような顔をしてエースを見た。



エースは怒ったような顔をしていた。



エースの怒った顔は久しぶりに見た。

普段なかなか怒らないから。

怯んだ。

普段見せない顔を見せ付けられて。

びくっと身体を振るわせた。

エースはそれに気づいたのか、申し訳なさそうな顔になって。

そのまま私を抱きしめた。


驚くよね。

私は再び身体を振るわせた。

でも、今度はとても暖かかった。


「私・・・ね。」


あれ?雪降ってなかったっけ?

雪降ってるから寒いはずなのに。

体中、すごく暖かくなった。

暖かくて。多分、安心して。

さっきまで思ってたこと、エースに全部、伝えた。


「だから、死にたくて。」


死にたい。

死にたいよ。

でも何でかな?

涙、出てきた。


「それは、なまえがまだ死にたくないって思ってる証拠だよ。」

「・・・・・・そうなのかな・・・」

「きっとそうだよ。」


死にたくないのか・・・

そう思うと、さらに涙が溢れてきた。


「うん・・・死にたくない・・・死にたくないよ、エース。」

「うん・・・」

「死にたくなんかない。まだやりたいこといっぱいある。まだ生きてたいよ!」


わぁわぁと泣きながら『死にたくない』『まだ生きたい』と喚いていると、

エースは抱きしめる力を強くして、『大丈夫だ』『まだ生きていける』と言った。





「なまえの生きる道は、僕が守る。大丈夫だ、僕がいつも傍にいるから。」





私は思いっきりエースに抱きついた。



Fin...
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