スノウクリスタル

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「あ・・・・・・」


雪・・・降ってきた。

一日の授業が終わり、夜になって。
僕は自室でレポートを書いていた。
外が急に暗くなったな、と思って、ふと外を見ると雪が降っていた。


「もう、そんな季節だったのか。」


0組として戦場を駆ける僕は、そういうことに気を向けている暇もなくて。
変わっていた季節にも気づかなかった。
かろうじて、寒くなった、くらいしかわかっていなかった。


「・・・テラスにでも行こうかな。」


部屋から見る雪はちょっと物足りなくて。
外が一望できるテラスへ向かうことにした。


魔方陣からテラスへ向かう。

心なしか、足が速まる気がした。


テラスに着くと、先客がいた。


「なまえ?」

「あ、エース」


彼女はなまえ。
僕たちと同じ、0組。
色々な異世界を旅する少女。


「どういたの?エース?」

「部屋から雪が降ってるのが見えて、それでテラスまで来たんだ。」

「ああ、そういうことか。」


普段と変わらない会話をする。

それが、少し心を寂しくさせて。

どうしようもなくなった。




何時頃からだろうか?

彼女に惹かれていったのは。

気づけば彼女のことを考えていたり。

目で追っていたり。

そんなに彼女に、なまえに惹かれているのか、好きなのか、と思うと、自分に呆れてしまう。




「なまえは何時からここに?」


彼女が好きなことにかわりはないか、と結論を出し、そっと彼女に近づく。


「私は1時間くらい前から。考え事をしていたんだよ。」

「そうなのか。」

「うん。そうしたら雪が降ってきてね。
 向こうの世界でよく使っていた魔法を思い出したよ。」


そう言って彼女は笑った。
彼女は簡単に言えば”異世界人”。
この世界だけではなく、色々な世界を見てきた。
だから、この世界の魔法だけではなく、他の世界の魔法も操れるのだ。


「・・・雪に関する魔法・・・なのか?」

「お察しのとおり。すこし時間がかかるけど、すごく綺麗な魔法なんだよ!」


自分の得意な魔法なのか、なまえは無邪気に話してくれた。


「エースにも見せてあげる!」

「え、いいのか?」

「うん!他のみんなには秘密だよ?」


この僕に、君と僕だけの秘密を作ってくれるというのか!!

僕は嬉しくてたまらなかった。



「さっき言ったとおり、時間がかかるから、座って待ってて〜」


そう言って、なまえは自分の座るベンチの右側を叩く。


「分かった。」


僕は言われたとおり、彼女の隣に座った。



なまえは静かに目を閉じ、両手を胸の前に持ってきて、手と手の間を少しあけた状態にした。

ふわっと彼女の長い髪が浮き、手が青白く光りだす。

コォォォォ・・・

僕たちのまわりに降っていた雪が、なまえの手の中に集まっていく。

その幽玄ななまえの姿に、僕はかなり見惚れていた。




5分くらい経ったころだろうか。

なまえの手の中には、少し青白くて透明な、直径4pくらいの結晶があった。


「はい、できた!」

「・・・これは?(綺麗・・・)」

「これは”スノウクリウタル”!雪の結晶だよ〜」


彼女がふわっと笑って説明してくれた。

確かに、本で見たような雪の結晶の形をしていた。


「まわりに降ってた雪を使って結晶をつくる魔法なんだ〜!
 作った結晶は絶対に溶けなくなるから、キーホルダーとかにすることもできるんだよ〜
 前にいた世界はよく雪が降ってたから、コレを沢山作って売ってたの!」

「溶けないのか・・・・・・すごい魔法だな。」

「うん!こっちでも使えてよかった!!」


よかったよかった、と言いながら、なまえは腰につけているポーチから青い紐を取り出した。

彼女はポーチから紐を取り出すために下を向いていたから気づいていないだろうけど。

そのとき、僕は顔を真っ赤にしていた。

そんな魔法を僕だけに見せてくれたんだ、と。


取り出した紐を適当な長さで切り、先端同士をあわせて結ぶ。
輪になった紐を、結晶に括りつける。


「はいっ、あげる!エース!」

「えっいいのか?」

「いいよ!いつもお世話になってるお礼〜!」


・・・今日は笑顔炸裂だな・・・・・・
またしても、にかっと笑顔を向けてくれた。


「ありがとう。大切にするよ。」

「えへへ〜」


照れたように、えへへ、と笑う彼女がやっぱり可愛くて。
つい見惚れてしまう。
そろそろ僕も末期だな、と思う。


「あ、レポート書かなきゃ!エース、そろそろ行くね!」


行ってしまうのか、そう思うとなんだか寂しい。


「僕も書いてないや」

「エースにしては珍しいねぇ〜」

「う、うるさい」

「ふふふ〜」


なまえはベンチからたって、タタッと歩き出す。

魔方陣の前まで行くと、ピタッと足を止め、こちらを振り向く。

ポーチから何かを取り出すと、ベンチに座る僕にずいっと見せる。


「お揃い!!」


そう言うと、なまえはまたねと駆けていった。


不意打ちだ・・・

僕は顔を真っ赤にして、目を細めて貰った結晶を眺めた。



(エースが気に入ってくれたみたいで良かった♪)
(彼女のほうが上手だったなんて・・・・・・いや、天然なんだろうな・・・)


Fin...
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