雪の思い出
0組は任務を無事に終え、バズの町で少しの間休息をとっていた。
各々はバズの町へと出向いたり部屋の中で休息をとっていたり自由な時間を過ごしていた。
そんな中、ジャックは部屋の中で刀の手入れをしていた。
「ジャーック!」
「っうわぁあ!?」
突然部屋の中に入ってきたなまえに吃驚したジャックは手入れをしていた手が滑りもう少しで手首が切り落とされるところだった。
慌てて魔法を解いて刀をしまう。
安堵の息をつくとジャックは顔をあげた。
「もう、急に入って来ないでよぉ!もう少しで僕の手がなくなるとこだったじゃないかぁ!」
「あは、ごめんごめん」
全く反省の色がないなまえにジャックはガックリと肩を落とした。
なまえはニコニコしながらところで、と話を切り出した。
「暇?」
「僕?」
「以外に誰がいるのさ」
「暇っちゃあ暇だけど…」
そう言うとなまえはジャックの腕を掴み目を輝かせ外に行こう!と言い出した。
ジャックは顔を少しだけ歪ませた。
「えー!外寒いじゃん、嫌だよぉ」
「いいじゃん!滅多にない雪だよ!?魔導院にいたら絶対経験できない貴重な雪なんだよ!」
「貴重な雪っていうほどじゃあないと思うんだけど…」
「ねぇジャックお願い!一人だと寂しいんだもん」
両手を合わせ必死にお願いするなまえにジャックは悪戯心が芽生えてしまう。
滅多に人を頼らないなまえが自分をこんなにも頼ってるという優越感がジャックを支配する。
「えぇ…どうしよっかなぁ」
「ジャックお願い!一緒に行こう…?」
「…うーん」
本当ならばなまえの頼みだしすぐにでもオッケーと言いたいところだが、ジャックもお年頃だ。
好きな子にはいじめたくなる。
「そうだなぁ…外寒いしー僕さっき手首切れそうだったしぃ」
「…うぅ…」
明らかに落胆するなまえにジャックはにやける顔を必死にこらえながら迷ってる振りをする。
なまえは下を俯く。
「けどなまえがどぉしてもって言うんなら」
「じゃあいいや。キングと一緒に行ってくるから」
「なっ」
切り替えはやっ!とジャックは心の中で突っ込む。
なまえはジャックにまたねと手を振ると部屋から出ようとした。
ジャックは慌ててそれを止める。
「ぼ、僕が行くって!」
「えー?ジャック嫌そうだったじゃん。無理しなくていいよ」
「じっ実は僕も外に行きたかったんだよねぇあはははは」
そう言うジャックに今度はなまえがニヤリと笑う番だった。
ジャックよりもなまえのほうが一枚上手ということがわかったところでなまえとジャックは部屋を出て外へ向かった。
「うっひゃあああ!」
「うへぇ…」
テンションの高いなまえに加え外の寒さに萎えるジャック。
外は一面が銀世界でついでに吹雪いていた。
最悪の天候である。
「ジャックー!雪、雪だよひょぉおお」
「ささささぶいー…!」
ジャックは自分を抱き締め身体を震わせる。
なまえはそんなジャックなんてお構い無しに寒さにも負けず吹雪にも負けずはしゃぎ回っている。
その様子を震えながら見るジャックはなまえのことを犬か!と心の中で突っ込んだ。
ジャックは身体を擦りながら回りを見渡すと辺りは一面雪だらけで景色も何もなかった。
早くなまえを連れて町へと戻ろうと考えていると頭にベシャッという音と共に冷たいものが当たった。
それがすぐに雪だとわかるのに時間はかからなかった。
「よっし!」
「………」
なまえは両手で雪玉を作りながらジャックを挑発するように笑う。
静かに頭に被っている雪を手で取り払いジャックは冷静になった。
もしここで自分がやり返してしまったらなまえの思うつぼだ、と。
「とう!」
「うりゃ!」
「どうだ!」
「……っこらぁなまえー!!」
「あははははー!」
しかしジャックは我慢できなかった。
ジャックはやり返しだと言わんばかりになまえに向かって瞬時に雪玉を作り投げ返す。
それが見事なまえの頭にヒットしジャックは小さくガッツポーズをする。
頭に当たったというのになまえは笑いながらジャックに向かって雪玉を投げ返した。
こうしてしばらく2人だけの雪合戦が始まったのだった。
「はぁっ…」
「はぁ、はぁ…」
雪合戦のお陰で2人とも身体が雪だらけとなってしまった。
ジャックは髪のセットが崩れていてボサボサとなっていて、なまえは頭の上に雪が積もっている状態だった。
しばらく見つめ合うとどちらからともなく笑いだした。
「あはははは…はぁーっ…」
「あはは、ジャック髪の毛ぼっさぼさ!」
「そういうなまえこそ頭の上に雪積もってるよー」
笑いあったあと2人は雪の上に座り、お互いね雪を払いあう。
なまえはジャックの顔を見ると吹き出した。
「ジャック鼻真っ赤」
「そういうなまえこそ」
なまえはクスクス笑いながら何か閃いたように雪玉をふたつ作り始めた。
ジャックはそれを静かに見守っているとなまえは雪玉の上にもうひとつの雪玉重ねた。
「雪だるま」
「よし、僕も!」
ジャックも両手で雪玉を作りなまえのように雪だるまを作った。
若干ジャックのほうが大きいのは手の大きさが違うからだろう。
「持って帰りたいな」
「それは無理でしょー。あっち暖かいし」
「だよね」
雪だるまを見つめるなまえの両手は真っ赤になっていた。
ジャックも自分の手を見ると真っ赤になっていて思わず笑ってしまった。
急に笑ったジャックになまえは首を傾げて覗き込むと鼻にジャックの唇が当たった。
「なっ」
「冷たい」
目を泳がせるなまえがかわいくてジャックはなまえを抱き締めた。
ジャックから逃れようと少しだけ抵抗をしたなまえだったがジャックの力に敵うわけもなくなされるがままになった。
「ふふー」
「…ジャック冷たいよ」
「冷たいねぇー」
「…恥ずかしいよ」
「なになに聞こえなーい」
「ばかっ」
ジャックの背中を叩くなまえにジャックは頭を撫でる。
ジャックは徐々に身体を離しなまえの額に自分の額をくっ付けた。
なまえはまだ恥ずかしいのか目線を下にしている。
「なまえ」
「…ん?」
「こっち見てよぉ」
「や、恥ずかしい」
顔を横にそらすなまえにジャックは苦笑を浮かべて自分の両手でなまえの頬を挟んだ。
なまえは冷た、と小さく呟く。
「………」
「なな、何するつもり…?」
「えぇ、言ってもいいのー?」
「い、言わないでいい、です」
「ふふーかわいーなぁもう」
ジャックは笑いながらなまえの唇に自分の唇をくっ付けた。
思いっきり目を瞑っているなまえにじわじわと何かがジャックを支配しそうになる。
ジャックはそれに支配される前に唇を離した。
「町戻ろ、風邪引いちゃうよー」
「う、うん」
「続きはシャワー浴びた後にで」
も、という前にジャックの頭に雪が積もり目の前を走っていくなまえの姿があった。
ジャックは頭の雪を取り払うとなまえを追い掛けるように走り出した。
2つの雪だるまは2人を現すかのようにぴたりとくっついているのだった。
(たまには雪っていうオプションもいいかなぁ、なんて)