寄り道少年(企画)



 ある晴れた日、少年は家を出た。
 塀の上に丸まる猫を見上げて、後から走ってきた小学生の群れに揉まれて、玄関先の花壇で風に揺れる花に水をあげていた近所のおばさんに挨拶をして、少年はまっすぐな道を進む。石につまずいて転んで膝を擦りむいて、正面からすごいスピードで近づいてくる車を避けて脇道に入って、突然に空を埋め尽くした雨雲から零れ落ちてきた雨粒に打たれながら、少年は雨宿りのできる廂を探して走る。とある家の軒先に間借りして、ずぶ濡れになって滝のような雨を眺めていた少年に、番犬が吠えた。仕方がないので雨の中に飛び出すと、そこがどこなのか分からないことに少年は気がついた。
 途方に暮れた顔をした少年が空を仰ぐ。透きとおった黒の雲は透きとおった水の粒を落としていた。雨と呼ばれるそれらは地に降り注ぎ、少年から熱を奪ってゆく。
 不意に、少年の頭上に落ちる雨が停まった。
 背後を振り返った少年の髪が揺れ、艶やかな束となったその先から滴が零れる。

「学校は? こんなところで何をしてるんだい?」

 傘の中に少年を入れたお爺さんが問う。

「道に迷ってしまいました」
「学校ならあっちだよ」

 怪訝そうな顔をしながらお爺さんはとある道を指差した。言葉を呑みこんで深々と礼をして、少年はお爺さんが示す道とは別の道に向かって駆けてゆく。
 雨粒が降り注ぐ雲間からは、儚く細く、それでも確かに、荘厳なまでの日脚が伸びていた。



寄り道
(君が見て触れて感じたすべては、時機が来た時、何よりも君を輝かせる源となるから)



少年百科さま提出



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