放課後少年と神様01


 帰り道、夕暮れの茜に染まる潮の満ち引きで水位の上下する川沿いの道。対岸に見える住宅街と、波が上下するコンクリートに住み着いているフジツボと。時折、自転車をこぐ俺の傍らを車が通り過ぎてゆく。
 交通量ほぼ皆無の三叉路で、そこに在る意味があるのかすら判然としない赤信号にひっかかった俺は自転車を停める。信号待ちをする俺の目の前に、なにか、もやっとしたものが現れた。
 それは霧か霞のような何かで、ブロック塀の続くどこか鄙びた景色を曇らせるも、気づけばひとのような塊になっている。
 そして、

「世界を内側から眺めてみるというのは、どんな気分だい?」

 白いもやもやが、そんなことを言った。信じられないとか受け入れられないなどという以前に、とりあえず言葉を失ってみた俺は間抜けな表情を晒していたに違いない。だが、そんな俺にかまうことなく、その白い何かは勝手に喋り続ける。

「外側から俯瞰したい、と、そういった欲求にかられたことはないだろうか?」

 その白いものは俺ではなくどこかあらぬ方向を見ているらしく、これは憶測でしかないのだが、それはどうやら夕暮れの空を仰いでいるようだった。

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