少女と神様01
きらきらしい緑に溢れる森を見た。
寄せては返す、碧と透明を繰り返す透きとおった波にさらわれてゆく砂浜を見た。
地平線に落日が融ける砂丘を見て。
蒼穹の下、海原の上。群れを成して飛びゆく渡り鳥。水と大気の境目に、私は白いもやもやを見つけた。それは白んだ水蒸気にぼやけてしまうような風体をしているにもかかわらず、なんだか細長い形状を呈していて。要するに、なんだかひとのかたちをしているようだった。
「幻覚?」
私の呟きに、ほほぅ、と、その白いもやもやは愉快そうに頷き、
「では、君は、この私が幻想だと言うのだね?」
何かを企んでいるようなこちらを試しているような、わざと挑発しているような、そんな口調を投げてきた。
姿はぼやけているのに声だけははっきりと聞えてくる目の前のもやもやに、これが幻聴というものだろうか、と、そんな認識に私は到達する。
にこり、と、その白いものが微笑った、ような気がした。
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