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FF13『ロッシュとネコ化夢主シリーズ』ネ
コ、拾われる。
ロッシュは愕然としていた。確かに此処は彼女が使用していた部屋であるはずだ。幾ら日頃の疲れが酷いからと言って幻覚まで見てしまうほどではないし、何よりあまり知人の宛がわれた部屋や家など間違えることもない。別に、友人が少ないから間違いようもないとは言ってない。断じて違うとだけ俺は主張しておこう。
しかしだ、今日はようやく取れた休暇であるからたまには彼女…メイルフォードを食事にでも誘ってみようかと思い立ちここまで来たのだが。以前教えてくれたセイレーン公園の少し離れにある住宅街。その中に建つ施設のある一室を借りて非番の日はそこで過ごしているらしい。彼女らしいと言えばそうかもしれないが。
そこで彼女の部屋までたどり着いたまではいい。だが幾らインターホンを押しても返事はないし、違う部隊に所属している彼女と会う機会など限られていたものだから連絡先など聞けなかった。男として情けなく思え、ロッシュは少しだけ落ち込んだ。だがいつまでも独り身の女性の部屋の前に立っていたらそれこそ不審者として通報されかねない。それだけはPSICOM管理官ヤーグ・ロッシュの名誉に己で泥を塗ってしまう。誰だ今自意識過剰な奴と笑ったのは!
何となく手を翳しかけた扉に少しだけ違和感を感じた。確かに誰かがいるような雰囲気はあるというのに未だに反応が返ってこないことも。ロッシュは意を決して、扉に近づき手を触れれば驚くことにロックなどかかっておらず、すんなりと受け入れたのだ。無用心とかより、何があったのではとこの部屋の主に承諾を得ることより彼女の無事を確かめることを優先候補と決め、足を踏み入れた。
あまり装飾のされてない借りた時からそのままと例えても良いほどシンプルな部屋には、メイルフォードが生活していることを示すものが少ない。些か不安ばかりが募り始めた頃、リビングのソファーの上に丸まる一匹の黒猫を見つけた。…………猫?
「一度も、聞いたことなかったが…寝ているのか」
ペットを飼っているなど聞いたことはない為、僅かな意外性にロッシュは考えつつも、その猫を起こさぬように両手で持ち上げてみた。首輪のようなものがついていると思ったが、それはどうしてか見覚えがあるような気がするし、首輪みたいにきっちり着けられておらず朱い紐が危うげに乗っかってると言った方が正しい。それに、よく辺りを見てみればメイルフォードの軍服が不自然に放られている。その服があったのは、この猫がちょうど丸まっていた場所。
「………まさかな」
いかにも馬鹿馬鹿しい考えが一瞬浮かんだが、そのような例など聞いたこともないし見たこともない。だがこの猫がどうしても気になって仕方がない。ロッシュが両手で持ち上げたままの猫を見つめていたら、ぴくりとしっぽが跳ねて微かに目を開いた。大抵、黒猫の概念というと黄色い瞳とかなのだろうが、驚くことにこの猫は瞳まで濡れたような漆黒の輝き。まるで、本当に彼女のようではないかと、唖然とした表情で固まるロッシュに更なる衝撃が襲うのであった。
「………何時まで見てるのかな、変態ロッシュ中佐は」
「………ね……猫が喋っただと……!?」
「起きたばかりの人の前で騒がないでくれないかなぁ」
「本当にメイルフォードだと言うのか!」
「だから五月蝿いよ馬鹿!」
特殊編成部隊小隊長メイルフォード・ベンメリアに熱烈片思い中なPSICOM管理官ヤーグ・ロッシュは身も心にも強烈な猫パンチを喰らいこれが現実だと認めざるを得なかった。彼の苦悩の日々はこれからだ。
(しかも私の体に触り続けないで欲しいなぁ、実質服着てないようなものなんだから)(………!!!!)(今更気付かないでよ)(す、すまない…!)
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やってみたかった、ネコシリーズ。時間設定は軍所属時代ですが、シドやリグディや出来れば他のキャラも絡ませてギャグシリーズでいきたいなと。もちろんロッシュが一番の被害者です^^^
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