隔離部屋 | ナノ




FF13(ジルとロッシュ)
(FF13)

「あなた、願いによる奇跡とか夢って信じる?」



唐突だった。ただ、パージ対象者の収集された地が臨海都市ボーダムだったせいかもしれない。もしかしたら、他の場所が始まりの地だったなら彼女はこういった話を切り出して来なかっただろう。願いが叶うという既に名物と化した花火大会の、数日後だったから余計に。だが普段よりこういったあまりにも非現実的な祈りや願い事といった物には否定的で、いつも現実的な事実しか求めない彼女の印象からすれば、ロッシュにとって不思議でならなかった。なぜならジル=ナバートは、普段より静かな口調で問いかけてきたのだから。



「唐突に、何を聞いてくると思ったら、」


「私らしくないとでも言いたそうね」


「普段のナバート中佐を見ている私としては少しばかり、な」


「心外ね。私だって女よ」


「では、『PSICOMのジル=ナバート中佐』らしくないとでも?」


「……本当。つまらない男、あなたって」



本当にため息をつきそうなほど、眉根を寄せたナバートはロッシュへと向けていた双眸に眼鏡をかける。そうすれば、いつも他人を見据えているようでどこか遠くを望む気高い彼女の姿を取り戻す。そうか。先ほど、なぜかいつもと違く見えたのは無意識のうちに彼女をずっと見てきたジルとして重ねてしまっていたせいか。ロッシュはそこで僅かに感情の片鱗が軋んだ気がして少しだけナバートから視線を逸らす。だが、彼女はそんな彼の様子など気づかぬふりをして踵を返す。




「ただ昔に戻ってみたかっただけよ。もう忘れましょう」





互いに昔、望んだ夢は違ったように今も変わらず同じ道を歩めないのだから。そう彼女が言っているような気がした。(10.4/5)







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