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参考記事]
月下 〜天狼の王が望むもの〜
〔SS本文、詩など〕
2nd.Nov.2014
東の空に満月が煌々と輝いている。ロザリアの王であるアムレスとその部下シルヴァは、城のテラスに佇んで語らっていた。
「王。先日のシュヴァルツの砦攻めは見事な采配でした」
長身でやや痩せぎみの、眼鏡をかけた部下の言葉に、武人らしい筋肉質な体つきの王が応じる。
「天候にも助けられたな。勇猛な朱鷲族の奴らも、雨の中では赤子のようなものよ」
頭の両脇にぴんと立った三角形の耳介と、実った麦穂のような金色の髪、そして髪と同じ金色の毛に覆われた尻尾を持つ天狼族のアムレスが語る。王の瞳は、中天に昇ろうとしている月よりもなお鮮やかな黄金色を湛えている。成人してからすでに数年が経ち、世継ぎの子がいてもおかしくない年のアムレスがいまだに妃もめとらずにいるのは、彼が女よりも男を好むゆえであった。
「我が軍は順調に領土を広げていますね」
「ああ。遠からずこの一帯を手に入れて、やがては天下を……な」
王のそれよりも大きな三角形の耳介と長い銀髪、そして銀色の毛に覆われた太い尻尾を持つ魔狐族のシルヴァが微笑した。
「頼もしいお言葉です」
「お前にも随分助けられているぞ」
言いながら王が隣にいる部下の腰に手を伸ばすのを、シルヴァはすっと身を引いてかわした。
「私は、そういった意味であなたにお仕えするためにこの城にいるわけではありません」
「つれない奴め」
アムレスが不満そうな声を上げるが、部下は眼鏡を直しながらそっけなく言う。
「私にこだわらずとも、アムレス様の閨に自ら望んで侍る者などいくらでもいるでしょうに」
そういうことではない、とアムレスが呟くが、シルヴァは聞く耳を持たない。
「さて、私はそろそろおいとましますよ。カントレー地区の麻の栽培に関する文書をまとめなくてはなりません」
政と軍略の両面で功績を上げている賢将が去った後で、アムレスはテラスに残って夜風に吹かれながら一人ごちた。
「魔狐族のシルヴァか……。いつかはあいつを我がものにしたいな」
王と部下という関係ではなく、と呟く。勢力を拡大しながら、なお多くのものを手にしようと望む天狼族の王を、空高く昇った満月が明々と照らしていた。
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