sleep | ナノ

ぱちりと目が覚めた時、辺りはまだ薄暗かった。
そっと顔を傾けてみると、隣には寝息を立てる官兵衛の姿が視界に入った。
整った顔立ちは、眠っていても変わらないものである。
眠る時まで凛々しく澄ました顔のままの官兵衛が、とても愛おしく感じられた。


「…何用だ」
「あ…ごめんなさい、」


瞳を閉じたままの官兵衛に声をかけられ、なまえは思わず上半身のみを起こしかけた。
だが、その行為を止めたのは、他でもない官兵衛であった。
布団の中で優しく掴まれた腕から、官兵衛の温もりが伝わる。
首だけをなまえの方に向けた官兵衛がぱちりと瞼を押し上げると、どうにも眠っていた様子がどこにも見られない。
元々最初から起きていたのではないかと思わせるほど、その表情は活動中のそれとなんら変わりがなかった。


「何かあったのか」
「いえ…。それより、起こしてしまったみたいで、ごめんなさい」
「構わぬ、元々眠りが浅いのだ。卿のせいではない」


いつの間にか、布団の中で掴まれていた腕は自由になり、代わりに互いの指が絡まりあうように繋がれていた。
いつもよりも伝わる熱が高い気がするのは、やはり官兵衛が浅いながらも眠りに落ちていたからだろうか。
起こしてしまった事への罪悪感よりも、なまえには幸せに満ちた気持ちの方が強かった。


「さっき、官兵衛様の夢を見たんです」
「…私の?」
「はい、どんな夢だったかは起きた途端に忘れてしまったみたいなんですけど…」


それでも、確かに官兵衛の事を夢に見たのは間違いなかった。
そして、忘れてしまっていたとしても、その夢がとても幸せなものであった事も。
官兵衛にだけ届くような小さな声で伝えていると、突然官兵衛がなまえの身体を抱き寄せた。
ふわりと包まれる感覚がとても温かくて心地よい。
擦り寄るように官兵衛の胸元に顔を埋めてみると、安心感のある香りが鼻腔を突いた。


「官兵衛様…?」
「…寝ろ、このまま」


まだ夜明けは先だ。
そう呟いた官兵衛の顔はなまえには見えなかったが、官兵衛への愛しい感情は募る一方だった。
ぎゅう、と強く抱きしめ返しながら、なまえは素直に、はい、と応じるのだった。


君への想いは消せない
(夢の中も)

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