sleep | ナノ

待てよ。
無理矢理なまえの肩を掴んで振り向かせてみると、案の定なまえは泣いていた。
またやってしまった、という後悔が一気に膨れ上がり、細いなまえの肩を掴んだ手から力が抜けた。
その隙を突いて再び大吾に背を向けようとするなまえに、大吾は慌てて背後からなまえを抱きしめた。


「…離して、ください」
「嫌だ…」
「どうして放っておいてくれないの…?大吾が私を…突き放したのに…」


身体を震わせて涙を流すなまえは、それでもしっかりと大吾の腕に縋りついていた。
離して欲しくなどないくせに真逆の言葉で撥ねつけようとするなまえの姿に、大吾の腕が自然と力を帯びる。
一度で懲りたはずなのに、どうしてこうも泣かせてしまうのか。
全てが裏目に出る己の行動に、大吾は情けなさから言葉が紡げなかった。


「俺の事は忘れろって…言ったくせに…」
「…悪かった」


本当はずっと後悔していたなんて、今さら信じてくれるのだろうか。
なまえから離れてやる事で守っていたつもりだった事を、なまえは理解してくれるのだろうか。
それが間違っていた事も、悔やんで悔やんで悔やみ切れずに再びなまえを探し出した事も、今も変わらずなまえを大事に思っている事も。
今から告げても遅くはないのだろうか。
伝えたい事ばかりが胸を渦巻き、大吾は結局なまえを抱きしめる以外の手段を見出せなかった。


「なまえ…」
「どんな思いで過ごしてたか…大吾は知らないくせに……」


ずっと待ってたのに。
なまえの震える声に弾かれるように、大吾はなまえを強引に振り向かせた。
頬を伝う涙までもが愛おしく、大吾は奪うようになまえの唇を塞いだ。
触れたその柔らかな感触ですらも、大吾の身体は覚えていた。それなのに、と募る後悔だけは止められなかった。


「もう二度と、お前から離れたりはしねえ。お前を泣かすようなことは、二度と御免だ」
「…遅いよ」
「なまえ…」


初めからその言葉を待ってたのに。
そう言って大吾の胸に抱き縋ったなまえは、ほんの僅かに口元に笑みを含ませていた。
なまえの背中を包み込み、頭を撫でてやりながら、大吾も静かに口元を緩ませた。




眠らず君に伝える想いを探すよ


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -