sleep | ナノ

こっくりこっくりと舟を漕ぐ眠たそうななまえの姿に、慶次の頬が緩む。
肩にもたれ掛かるその重さがほとんど感じられず、なまえがいかに小柄で脆い存在であるかを思い知らされるようだった。
先に眠れば良いものを、とは思えども、愛しい人の愛らしい姿は心が癒される。
肩先に乗せられたなまえの頭を優しく包み込みながら、慶次は何度も何度も撫でてやった。
こっそりと覗き込んでみれば、いつの間にかすっかりなまえの瞳が閉じられていた。


「…寝ちまったか」


ぽつりと一人呟きながら、そっとなまえの額に唇を寄せた。
眠った顔の、なんと可愛らしいことか。
顔を近づけたことで届いたなまえから感じられる甘やかな芳香に、どうしようもなく胸がざわついた。


「俺を待っててくれる女が居るってのは、幸せなもんだねぇ…」


それがなまえとなれば尚更…。
その言葉は胸に秘めたまま、慶次は再度なまえの額に口付けた。
比べれば比べるほど不釣合いなほどの体格差だからこそ、慶次がなまえに触れるその仕草には細心の注意が払われていた。
抱き寄せるときも、頭を撫でるときも、手を取るときも、なまえの中へと侵食するときも。
自分がこれほどまでにのめり込んでしまったことが滑稽で、慶次はふうと溜息を吐いた。


「アンタのせいで…天下の戦人、前田慶次様も形無しだな」


なまえを起こさぬようにそっと抱き上げると、慶次は静かになまえを布団へと運ぶ。
本当はなまえの前では形無しだろうと構わないのだ。
なまえの前では、慶次は戦人ではない、ただの男に過ぎないのだから。


「ゆっくり眠りなよ、なまえ」


優しく抱き寄せながら、慶次もそのままなまえの隣へと身体を横たえた。
包み込まれるような感覚に幸せそうな表情を浮かべるなまえは、無意識ながらも慶次に擦り寄りながら寝息を立てるのだった。



せめてもう少し、君の寝顔を見つめていたい
(時間よ止まれ…)



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