sleep | ナノ

「何故私が卿と褥を共にしなければならぬ…」


文句を言う官兵衛は、それでもなまえを追い出そうとはしなかった。
だからなまえは、官兵衛が背を向けてしまっても嬉しいとすら思えたのだ。
広くて大きな背中に、なまえはぴたりと頬を寄せる。
そのままするりと官兵衛の腰に手を回してみると、大きな溜息が漏れた。


「卿の考えることは判らん」


言葉とは裏腹に、なまえの手には官兵衛の手が重ねられた。
すらりと伸びた指が、慈しむようになまえの指先を撫でてゆく。
重ねられた官兵衛の手はとても温かく、背中に抱き縋るなまえは至福を覚えた。


「幸せです、とっても…」
「何故…?」
「官兵衛様の傍で眠ることができて」
「…益々以って、卿は判らんな…」


指を絡め合うように重ねられた官兵衛の手が、なまえを引き寄せる。
顔は見えなくとも、なまえの手には確かに官兵衛の温もりが伝わってくる。
おやすみなさい、と呟いたなまえの声に、官兵衛も嗚呼と応えた。
官兵衛をきゅうと抱きしめるなまえに、官兵衛の口元が微かに緩む。

背を向けたのは単に、気恥ずかしさがあったから。それをなまえが知ったらどう思うだろうか。
官兵衛は背中に感じるなまえの呼吸に耳を澄ませながら、ぼんやりと暗がりに目を向けて一人物思いに耽っていた。
なまえがすっかり眠りに落ちたら、そっとその身体を抱きしめてやろう。
自分がどれほど幸せそうな顔をしているかなどには気付かぬまま、官兵衛は長い夜を堪能するのだった。



Lie Down With You
(添い寝シリーズVol.8)


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -