息を殺しながらそっとなまえに顔を近づけていると、鼻先が触れる寸前にぱちりとなまえの目が開いた。
驚きで慌てて顔を離す幸村に、眠れないんですか？となまえが問いかける。


「い…いえ、そういうわけでは…」
「幸村様…顔が真っ赤です」


ふふ、と微笑むなまえに、胸が詰まる。
薄手の夜着越しに伝わるなまえの体温に、邪まな思いを抱いた己を幸村は恥じた。
だが、隣で眠りに就こうとするなまえの顔が可愛らしくて、薄っすら開いた唇が堪らなく愛らしくて、触れたいという欲に理性が持っていかれたのだ。


「す…すみませんでした」
「何故ですか？」
「その…起こしてしまって……」


思わずなまえから目を離してしまった幸村の頬に、温かい掌が添えられる。
遠慮がちに幸村が再度なまえの方へと視線を戻そうと顔を上げると、幸村はそのままなまえに唇を奪われた。
ちゅっと触れるだけの口づけで離れたなまえは、満足げな笑顔を幸村に向けている。
混乱した頭で言葉を探していると、頬に添えられていたなまえの手が幸村の顔のラインをなぞるように顎の方へと下っていく。


「寝ているところを襲おうとするなんて、幸村様ったら悪い人です…」
「あ…気付いて、いたのですか…？」
「あのように露骨に顔を離すんですもの…」


まるで悪戯っ子のようでしたよ？
そう言ってくすくすと笑うなまえに、幸村の頬が再び真っ赤に染まった。


「なまえがあまりにその…愛おしくて……」
「愛おしくて？」
「その…つい、触れたくなったんです」


すみません、としょげた幸村が幾分小さくなったように見えて、なまえの口元には再び笑みが浮かぶ。
頬に触れられていたなまえの手がするすると幸村の腰から背中へと回されて、幸村は思わず身体を強張らせた。
ぎゅっとなまえが抱きついて来たので、一瞬戸惑いながらも幸村はなまえの身体を抱き寄せる。


「幸村様でも、寝込みを襲おうとなさることがあるんですね」
「…軽蔑しましたか」
「いいえ、」


愛されてるなぁって、実感しました。
幸村の胸に顔を埋めながら囁くなまえに、思わずぎゅっと抱きしめる腕に力がこもる。
その行為の裏に安堵の気持ちがあったことは言うまでもない。
もちろん、他の誰よりも愛してますから。
力強く抱きしめた腕の中のなまえに囁きかけると、幸村はなまえの顎を掬ってそっと唇を塞いだのだった。




Lie Down With You
（添い寝シリーズVol.6）