sleep | ナノ

「…添い寝、ですか?」
「はい、ぜひ」
「はぁ…まぁ、構いませんが」


そんなやり取りをしたのはつい先ほどのこと。
今は同じ布団で横になり、左近は己の右手に頭を乗せながらなまえを見つめていた。
なんでまた急に…という疑問はさておき、実はどぎまぎしているということを悟られないように平静を装うことに意識がとられてしまう。
ぼんやりと肌理細やかななまえの頬に見とれながら、左近の口からは溜息が漏れた。


「あの…ご迷惑でした?」
「ん?いや、そういうんじゃないんですがね」
「……?」
「や、期待しちまうのが男心…ってやつですかね」


ははは、と左近は笑って見せたが、ポッと染まったなまえの頬を目にしては、欲に流されるわけには行かないという思いが湧き上がる。
自分が心底なまえに惚れているのだと改めて自覚させられて、左近は再び溜息を漏らすとばたりとうつ伏せに倒れこんだ。


「あぁ…ダメだ……」
「左近様…?」
「あんたが大事すぎて、期待するどころか手を出す度胸が出ません」


布団に突っ伏したまま片目でちらりとなまえを覗き見てみると、照れたなまえの顔が映る。
嗚呼、またそんな可愛い顔して…。
左近を誘惑する要素はたくさんあるものの、抱きしめる以上の勇気は出ない。
こんなにも臆病になることがあるなんて、と自分自身の感情に戸惑いながら、それでも左近は煩いほどに高鳴った心臓を無視してそっとなまえの頬に指を走らせた。


「こんなに緊張するのは初めてですよ…」
「それは私もです」
「本当に?」


なまえの頬から首筋、そして夜着の袷を割り裂いて胸元を掠め、左近はなまえの身体に指先を走らせる。
すべやかななまえの肌と熱くなった体温が、指先に心地よい。
微かに吐息を漏らしながら身体を震わすなまえをじっと見つめながら、柔らかなふくらみを際どく触れて、左近はなまえの心臓に指先を押し付けた。
指先に伝わる鼓動の激しさに幾分嬉しさを感じながら、左近は自然と浮かび上がる笑みを止めることは出来なかった。


「こんなにしてたら、眠れませんよ?」
「だ…って、」
「本気で惚れた女は、簡単には抱けないもんですね…」


今日はこれで勘弁してもらえますか?
なまえに問いかけた後で、左近はなまえの頬に口付けると、そのままその華奢な身体を抱き寄せた。
遠慮がちに左近の夜着を掴むなまえの仕草に、愛おしさを感じずにはいられない。
なまえの香りに包まれて、彼女を抱きしめる左近の腕には自然と力が込められて行くのだった。




Lie Down With You
(添い寝シリーズVol.5)

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