sleep | ナノ

侵入する圧迫感に、なまえは息が詰まりそうになった。
何度経験しても、こればかりは慣れないのだ。
意識が飛びかけるほどの快楽が脳天まで駆け上がり、心臓が握りつぶされるような息苦しさは、この先何度経験しようとも身体は慣れてはくれないだろう。
吐息と共に厭らしいほど甘く熱を帯びた声が漏れるのも止められず、なまえは目の前の男の背に縋った。


「は…んぞ、様」
「…」


何度も果てるまで慣らされたはずの其処は、半蔵の侵入を阻むようにきつく半蔵の雄を締め付ける。
滑りを帯びた体液がとどまることも知らぬ程に溢れていたというのに、半蔵を受け入れることはいつも容易なことではなかった。
ゆっくりとなまえを気遣うように中へと収まる其れは、いつであろうとなまえに耐え難いほどの熱を与える。
半蔵の其れが全て中に収まるだけで、なまえは絶頂に身体を震わせるのだ。
そんななまえを、半蔵はいつも抱きしめながら待っていてくれる。
頬を撫で、額を合わせて口付けをくれる。決して自分本位な欲望に任せた行為をしない半蔵に、なまえは嬉しくもいたたまれなさを覚えていた。


「半蔵、様…、そのように…お気遣いなさらずとも、」
「否…」
「私は…構いません。…平気です、から」


上がった息を整えながら、途切れ途切れになまえは半蔵へと言葉を紡ぐ。
本当は半蔵に少しでも攻め立てられてはすぐにでも達してしまうのが常なのだが、半蔵が堪えているのであればなまえにはそれもつらい。
ためらいながらも両手で半蔵を引き寄せると、なまえは自ら半蔵に口付けてみせた。
微かに驚きの表情を見せる半蔵を余所に身体を起き上がらせると、なまえは繋がりあったままで半蔵の太腿へと腰を下ろす。
深くまで半蔵の其れが押し入る感覚に思わずぞくりと身体を震わせながらも、なまえは半蔵に縋るように身体を預けながらぎこちなく腰を前後させた。


「…っ、……」


僅かに漏れた半蔵の吐息が、なまえの耳をくすぐる。
なまえの背中に回された半蔵の大きな手が強くなまえの身体を抱きしめ、なまえの動きを支えた。
若干ながらも余裕を失った半蔵がなまえの耳元で熱っぽい吐息を漏らす毎に、なまえの動きにも拙いながら激しさが増してゆく。
どれだけ溢れてもまだ流れ出る蜜の音に、部屋中が支配された。


「なまえ…」


己の名を呼ぶ唇に、自然となまえは口付けを求めた。舌先が触れただけで、なまえの中からは蜜が溢れる。
許容を超える快楽の波に、既にもう目の前まで迫った限界になまえの動きは止まりそうになるが、半蔵はそれを許さなかった。
なまえの身体を支えながら下から容赦なく幾度もなまえの膣内を突き上げると、なまえが嬌声を上げて達したのにも構わずに半蔵はなまえを押し倒した。
だが、絶頂に身体を震わすなまえを余所に、半蔵の動きは止まらない。
苦しいほどに己を締め付ける秘所の最奥へと雄を捩じ込んでは先端まで引き抜く。
何度も何度も繰り返される激しい抜き差しに呼吸もままならないなまえは、眼前に閃光が走るような感覚に陥った。
半蔵の雄を咥え込んだままなまえの膣壁が痙攣し、それに連動するように半蔵の動きが激しさを増していくことにも気付く余裕などない。
終わりの見えない快楽に意識が限界に達しようとするその時、小さく呻きを上げた半蔵が一気になまえの中へと熱を放った。


「…っ、」


半蔵の其れがどくどくと脈打つ感覚までもがなまえの入口に残さずに伝わり、初めて経験する激しさと続けざまの淫楽になまえの目尻からは勝手に涙がこぼれる。
頭が真っ白になり、半蔵に組み敷かれたままぐったりと動けぬなまえに、ポツリと半蔵の謝罪の声がかけられた。


「…すまぬ」
「っ、え……」
「己を御せなかった…」


目尻を流れた涙を掬いながら詫びる半蔵の姿があまりにも申し訳なさそうで、なまえは弾んだ息も整わぬまま思わず笑みがこぼれた。
頬に添えられた半蔵の手に己の手を重ねながらゆっくりと頭を振って見せると、どことなく半蔵の表情もほっとしたものに変わったようである。
額を重ねながらすまぬともう一度なまえに謝った半蔵は、ずるりとなまえの中から己を引き抜くと、そのままなまえの隣に横たわった。


「なまえは…」
「?」
「都度、別な顔を見せる…」
「そんな、こと…」


照れて言葉を詰まらせるなまえを余所に、半蔵は口の端で笑って見せた。
今宵は特に。低い声で囁かれ、なまえは顔をぱっと染めた。
それでも半蔵の表情がどこか嬉しそうで、なまえは返す言葉もないまま重ねられた唇に深い至福を味わったのだった。



重なり合うたびに
(君が見せる仕種に溺れる)

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