sleep | ナノ

「氏康様はあったかいですね」
「…そりゃあどうも」


満足そうにぬくぬくと氏康の身体で暖を取るなまえに対し、当の氏康は些か閉口気味である。
突然やって来て一緒に寝ると言い出したなまえに、全くもって期待を抱かないわけにはいかない。
だからこそ布団の中へとなまえを招き入れたというのに、肝心のなまえはさっきからまるではしゃぐ子供のようだ。
詰まるところ、一緒に寝るとはその言葉通りだったのである。


「一人で寝ると寒くて眠れないんです。氏康様がこんなにあったかいなら、私、毎日氏康様と一緒に眠りたいなぁ」
「お前なぁ…」


嬉しそうに話すなまえを尻目に、氏康はげんなりとした気持ちを隠すことなくなまえに向けて溜息を吐いた。
毎日生殺しじゃたまったものではない。それが氏康の正直な気持ちなのだが、なまえには通じないのだろう。
ムッとしながらもなまえの顎を掬って、敢えてそれらしい雰囲気を作り出す。
無言のままぐっと顔を近づけてみれば、案の定なまえは寸でのところできゅっと目を瞑った。


「俺を単なる暖を取るだけの道具だと思ってんなら、大間違いだぞ」


口付けをせぬままにっと笑いながらそう言ってやると、ぱちりと目を開けたなまえは拗ねたように僅かに頬を膨らませる。
だがそれもつかの間のことで、なまえは反撃と言わんばかりに目の前に迫っていた氏康の唇を奪った。


「暖を取るだけの道具なら、こんなことはしません」
「…判ってるよ、悪かった」


ぎゅうと抱きしめてやると、なまえはとても満足そうに微笑む。
だがなまえの反撃はまだ終わりではなかった。


「じゃあ氏康様、明日も早いですからもう寝ましょう」
「お前、結局寝るんじゃねぇか!」


おやすみなさい、と再び氏康の唇を奪った後で、なまえは彼に抱きついたまま目を閉じた。
盛大な溜息が頭上から降り注ぐのも知らん振りのなまえに完全に負かされて、それでも可愛い奴だと思ってしまう氏康は、明日もそれじゃ通らねぇからなとなまえを抱きしめて言い聞かせるのだった。



Lie Down With You
(添い寝シリーズVol.4)

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -