sleep | ナノ

眠る姿はまるで猫のようだ、と思った。
身体を丸め、眠るには不自由に思えるソファの隅ですやすやと寝息を立てるなまえを見て、御剣は脳裏に猫の姿を思い浮かべた。
物音を立てないようにそっとなまえの傍に近寄ると、その寝顔を覗き込む。
起こさぬように。
頭ではそう思っているのに、裏腹に指先はなまえへと伸びてしまう。
額に掛かった前髪をそっと払うと、先程よりも眠る姿が良く見えた。

この侭ソファで眠らせるべきか、それともベッドへと運んでやるべきか。
まだ起きる気配のないなまえの寝顔を眺めながら、御剣は考えた。
抱き上げた時に起こしてしまうのは気が引けるが、こんなところに寝せた侭というのも気がかりだった。
ならばいっそ、となまえをベッドに運ぶことを決めた御剣は出来る限りそっとなまえを抱き上げた。

「ん……」

耳元で小さく吐息を漏らすなまえに、御剣は一瞬身体が強張った。
起こしてしまったのではないかという懸念よりも、その熱っぽい声に身体が痺れるような感覚を覚えたからだ。
愛おしさに口元だけで小さく笑うと、御剣はゆっくりベッドになまえの身体を沈める。

「…っ、」

しかし手を離したのは良いものの、御剣の身体はなまえを抱き下ろした中腰の状態から立ち上がることが出来なかった。
見れば、なまえの手がしっかりと御剣の服を掴んでいる。

「(まったく、ベタなことを……)」

仕方なしに御剣もなまえと同様にベッドに身体を沈めた。
ふと中途半端な状態の書類のことが頭に浮かんだが、目の前の愛しい人の眠る姿にはどうあっても敵わなかった。

「なまえから私への休息という贈り物だと思うことにしよう。ありがとう、なまえ」

唇をなまえの耳元に寄せて囁くと、御剣は彼女の華奢な腰を抱き寄せた。
そっと触れるだけのくちづけを落とすと、御剣はその侭静かに瞼を閉じた。





秘密のキス


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