sleep | ナノ

「…三成様?」


文机に向かって頬杖を付いている彼は、今のなまえの位置からは背中しか見えない。
盆の上の湯飲みに気を付けながら彼の傍へと忍び寄ると、呼び掛けに応じない理由が判った。
眉間に皺を寄せた悩ましげな姿のまま穏やかな寝息を立てるその様子が、なんとも三成らしい。
彼の日常の忙しさを思うと、この姿は必然だろう。なまえの口元には自然と綻んでくる。

煎れたての茶の入った湯飲みを片付けて再び戻るとき、なまえはその手に肩掛けを手にしていた。
茶を届けに来た時と寸分違わぬ姿で眠る三成の背後に、音を立てぬよう気を付けながら近づく。
そっと覗き込んで見ると、やはり少し難しそうな顔をしている。

寝ている時まで気難しい顔をしている三成が、なまえにはひどく愛おしく見えた。だが同時に、夢の中にも彼の安寧がないことが、とても悲しくもあった。
彼を起こしてしまわぬよう、細心の注意を払って肩掛けを羽織らせる。
ここまでは無事に済ませることが出来たのだが、そっとその場を去ろうとした時、彼は狸寝入りでもしていたのではないかと疑いたくなる程素早い動きでなまえの手首に掴みかかった。

驚きのあまり尻餅をついたなまえの目に映ったのは、鋭く射抜くような目をした三成の表情だった。
だがそれも一瞬のことで、相手がなまえであると理解した途端に、三成は幼子のようになまえに縋り付いて再び瞳を閉じたのだった。


「暫し…寝る……」


消え入りそうな声で囁くように言うと、三成は瞬時に寝息を立て始めた。
尻餅をついた時と同じ姿勢のまま抱き枕にされたなまえは、騒ぐ心臓を宥めながらゆっくりと三成の顔を覗き込んでみた。
先程までとは違い、なまえに抱き縋る三成は安堵に満ちた表情をしている。

どんなに強く当たられたとしても、二度と離れまい。
強く心に決意すると、なまえは彼の頬に掛かる髪を指先で丁寧にそこから退けてやったのだった。




I just wanna see you shine
君が輝くのを見ていたいだけ



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