明け方の、そろそろ朝日が昇ろうかという時刻。
まだ眠りの中に居たなまえを起こしたのは、他でもない清正の声だった。
彼女の部屋まで忍んで来たのだろう清正は悪びれた風でもなく、優しげな目をしてなまえを見下ろしていた。
指先ではつんつんとなまえの頬に触れながら、寝ぼけ眼の彼女におはようと小さな声で囁く。
「悪いな、こんな早くに起こして」
驚きでまだ頭が回らないなまえをよそに、寝巻き姿の清正はするりと彼女の布団へと押し入る。
寝顔も寝起きの腑抜けた顔も見られたなまえは、恥ずかしさのあまり慌てて布団の端で顔を隠した。
「何してんだよ、なまえ」
「清正様が急にいらっしゃるから…こんな起き抜けの顔……」
「馬鹿、どんななまえも可愛いよ」
清正のまっすぐな言葉が、なまえを一層照れくさくさせる。
ぷいと清正に背を向けてみるが、彼は吐息だけで笑うとなまえを背後から優しく抱きしめた。
「なぁなまえ、一緒に日が昇るのを見ないか?」
「はい。でも…急にどうかされました?」
「いや、理由はないさ」
そう言って布団ごとなまえを抱きかかえると、清正はなまえの部屋の窓を半分ほど開いた。
ひんやりとした風が頬を撫で、なまえは思わず清正に暖を求める。
布団に包まれたまま、暫し無言の時を過ごしていると、空の色が煌々と朝焼けに染まり始めるのが見えた。
「空気が澄んでいるから、朝焼けが綺麗ですね」
景色から清正へと視線を移した時、なまえの心臓が音を立てた。
最初から朝焼けではなくなまえを見つめていた清正が、そっとなまえの頬に触れる。
優しげな瞳に吸い込まれそうな感覚に陥っていると、不意に清正の唇がなまえの唇をそっと塞いだ。
「最近おかしいんだよ、俺」
「…?」
「なまえを俺だけのもんにしたくて、止まらなくなるんだ」
馬鹿だよな。そう言って清正は、なまえを包み込むように抱きしめた。
なまえの目に映るものもなまえに残る移り香も、全て俺だけになれば良いのに。
その想いを心の中に秘めたまま、清正は再度なまえの唇を塞いだのだった。
遠くどこまでも連れさらって俺の色に染めたい