sleep | ナノ

薄ぼんやりとした手元の明かりを頼りに書き物をしていた半蔵は、ふと部屋の前に人の気配を感じて筆を止めた。
誰もが寝静まった時刻に、どうやらその人物は半蔵の部屋の前で思案し、悩んでは引き返し考えては戻りとそわそわ動いているようである。
その気配を感じながら半蔵は書き物の道具一式を片付けてしまうと、その足で廊下をうろうろ動く者の方へと歩み寄った。
す、と襖を開けた先には寝巻き姿のなまえがおり、突然襖が開いたことになまえはびくりと身体を竦ませた。


「何用…」
「は、んぞう…様、あの…」


もじもじと視線を合わせたり逸らしたりを繰り返すなまえを、半蔵は室内へと招き入れる。
先ほどまでは墨の香りが漂っていた自室が、今はなまえの香りが満ちたような気がした。
既に敷かれていた布団になまえを座らせて用向きを問うと、なまえは向き合って座った半蔵の夜着のすそをちょん、と掴んだ。


「あの…一緒に寝ても、良いですか?」


控えめな声で視線を合わせようとしないまま、なまえは半蔵に問いかける。
見ようによっては誘っているともとられかねない問いかけをしていることには気付かず、なまえはただひたすらに追い返されたらどうしようかとそればかりに気が取られていた。
半蔵はそんななまえのもじもじした仕草の意味を知ってか知らずか、一瞬ぐっと言葉に詰まりながらもなまえの求めに応じることにした。

布団に入るや否や、なまえは嬉しそうに半蔵の胸元へと擦り寄った。
ぎゅっと半蔵の寝巻きの襟元を掴む仕草が愛らしく、半蔵もなまえの頭を撫でてやった。


「最近眠れなくて…でも半蔵様の傍にいると安心できるから、一緒なら眠れると思ったんです」
「……」


少しの落胆を隠しながら、半蔵はそれでもなまえの頭を撫でる手を背中へと回し、そのまま腰を抱き寄せてみた。
が、どうやらなまえはもうすっかり睡魔に襲われており、きゅうと半蔵に抱きついたまま深い呼吸を繰り返す。
僅かになまえを引き離すと、半蔵はなまえに気付かれぬように唇を己のそれで軽く塞いだ。


「…未熟……」


ふう、と溜息を吐いて、半蔵は再度なまえを抱き寄せる。
すっかり安心しきった顔で眠るなまえを横目に、半蔵はこれから眠れぬ夜を過ごすのであった。



Lie Down With You
(添い寝シリーズVol.1)

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